猫の疥癬の治療費は一般的に一回の通院あたり5,000~8,000円、総額は10,000~24,000円が相場になります。体重や感染の有無によっても金額が変わることもあります。
この記事では
・猫の疥癬症の治療方法と費用
・猫を疥癬症にさせないための飼育のポイント
「疥癬」とは
疥癬(かいせん)とはダニが原因で起こる激しいかゆみが特徴の皮膚炎です。
疥癬の原因となるヒゼンダニ(疥癬虫)類には幅広い哺乳類に寄生するタイプと主に猫に寄生するタイプに別れます。
そのため疥癬症は動物と人間の共通感染症である「人獣共通感染症」の1つです。
疥癬症の症状
疥癬症の症状は特徴的なものが多いです。
今回は疥癬症の症状の中でも特に特徴的なものを3つ解説します。
激しく痒がる
疥癬症の一番の特徴は搔きむしらずにはいられないほどのいられない程の強い痒みです。
激しい痒みの原因は、ヒゼンダニの寄生方法に関係があります。
ヒゼンダニは皮膚にトンネルを作りそのトンネルの中で排泄や分泌物などを出すことで起きるアレルギー反応により引き起こされます。
また、強い痒みのせいで血が出るまで掻きむしり、その傷からさらに細菌などが感染し、化膿性の皮膚炎が発生することもあります。
病変は顔から始まる
猫の疥癬症の初期症状の多くは頭部から発症します。
しかし重症化してしまうと病変は全身へと広がっていきます。
特に免疫力が弱い子猫では感染が全身に広がるスピードが早く、重症化しやすいため注意が必要です。
また子猫以外で重症化しやすい猫の中には
・猫エイズ
などの病気により免疫力が弱っている可能性もあります。
皮膚が分厚くなりフケが出る
皮膚に炎症が起こることで、皮膚は分厚くなりしなやかさが失われます。
フケはこの分厚くなった皮膚が大量に剥がれ落ちたものです。
また毛の根元にできたカサブタにより、毛も抜け落ちます。
そのため、ゴワゴワ・シワシワになった皮膚が目立つようになり、実年齢以上に老け込んだ猫のように見えます。
疥癬症の原因
疥癬症の原因となるヒゼンダニは2つの種類に分けられます。
主に猫に寄生するのは「猫小穿孔ヒゼンダニ」で、猫に限らず犬や人などの幅広い哺乳類に寄生する「穿孔ヒゼンダニ」です。
また、ヒゼンダニの感染も2つのルートがあります。
ここからは疥癬症の感染ルートについて解説します。
直接の接触による感染
疥癬症にかかっている猫と直接触れ合うことで、ヒゼンダニが寄生し感染します。
また、母猫が疥癬症にかかっている場合は、子猫にも感染してしまいます。
間接的な接触による感染
ヒゼンダニに感染した猫と触れ合ったときに衣服にヒゼンダニが付着してしまうことがあります。
衣服への付着を通して家の中に入り込み、飼い猫を感染させてしまうことがあります。
多頭飼育の場合には、ブラシや寝床の共有などでも感染します。
また、猫の体から離れたヒゼンダニは数日のうちに死亡しますが、その数日間の間に落ちた環境の中で感染を広めていきます。
疥癬症の主な治療法と費用
疥癬症は正しい治療を行えば完治をすることができる感染症です。
また早期の治療であれば、治療費も比較的安価な部類に入る傾向があります。
疥癬症の一般的な治療と治療費について解説します。
駆虫薬の投与
疥癬症の治療は寄生しているヒゼンダニの駆虫が必要不可欠です。
主に駆虫に使われる薬は
・イベルメクチン
などがあります。
薬の投与の方法は
・内服薬
・滴下薬(外用薬)
などがあり、症状の進行具合や薬の効き具合などによって使い分けられます。
しかし、駆虫薬の効果はダニの成虫にのみ有効で、卵には効果ありません。
そのため、ダニを完全に駆虫するために、駆虫薬は1週間から10日の間隔で2〜3回使用します。
このサイクルの治療で多くの疥癬は完治します。
また、多頭飼育の場合には、他の子も感染している可能性が高いため、症状がなくても一緒に治療を行います。
薬抗生剤などを投与
皮膚の炎症から強いかゆみを起こしている場合には、これ以上かゆみが酷くならないようにかゆみ止めを処方することもあります。
またかゆみを抑えることで引っかき傷を新しく作るのを防ぎ、皮膚の状態を少しでも早く落ち着かせるという目的もあります。
また、疥癬症が原因で細菌感染も発症している場合には、細菌感染への治療として抗生剤が処方されることがあります。
治療費
猫の症状の状態や使用する薬、治療期間や細菌感染の有無などによって治療費は変わります。
また、駆虫薬の多くは体重により規格が変わるため、体重が重い子の場合は駆虫薬の規格が1つ上のものになることがあります。
そうなると費用も高くなる傾向があります。
一般的な疥癬の治療費は一回の通院で5000円〜8000円くらいです。
通常、疥癬症の治療は2〜3回繰り返す必要があるので、総額は10000円〜24000円位となる場合が多いです。
しかし、これらの価格は平均相場なので、病院によって費用は異なります。
疥癬症の予防方法
疥癬症は、飼育の方法で感染のリスクを下げることが可能です。
今回は疥癬症の予防方法を3つ解説します。
感染した猫との接触を避ける
疥癬症に罹っている猫との接触を避けることが最も重要な予防になります。
しかし、多頭飼育の場合は完全に隔離をして飼育することは難しいでしょう。
そのため、感染した同居猫がいる場合は、発症の有無に関わらず猫たち全員に駆虫薬を投与し、感染を防ぐ必要があります。
屋内環境の整備
飼育環境を清潔に整えることも大切です。
ヒゼンダニは猫の体から離れてしまえば長い日数は生きられません。
そのため、その数日間の間に新しい寄生先に行かせないようにすることが重要です。
こまめな掃除をして、ヒゼンダニが猫を待ち伏せできない環境を作ってあげましょう。
屋内飼育の徹底
ヒゼンダニに接触することで感染しますので、感染の可能性が高い外に出さないことが重要です。
また、新しい猫を迎え入れた場合は感染がないことを確認できるまで別の部屋などで飼育し、隔離期間を設ける必要があります。
疥癬症になりやすい猫種
疥癬症は猫の品種に関わらず発症する病気のため、かかりやすい品種というのはありません。
しかし、疥癬症を発症しやすい猫の特徴はいくつかありますので紹介します。
疥癬症になりやすい猫の特徴
・免疫力が弱っている猫
・体力が落ちている猫
・衰弱している猫
このような状態は生まれて間もない子猫や高齢猫はもちろん、成猫でも病気などによってこのような状態になることは珍しくありません。
日頃から猫の健康状態を把握しておくことが大切です。
よくある質問
猫の疥癬症と耳疥癬症は何が違うの?
猫の疥癬症は「猫小穿孔ヒゼンダニ」というダニが原因で、耳疥癬症は「耳ヒゼンダニ」いうダニが原因です。
同じヒゼンダニ類ですが、顕微鏡で観察してみるとそれぞれに特徴や違いがあり、違うダニだということがわかります。
猫の疥癬症が人に伝染るとどうなるの?
もし疥癬の猫に触れた後に痒みなどの皮膚症状が現れた場合には、速やかに医療機関で診察を受けることをおすすめします。
ペット保険は必要?
ペットには公的な保険制度がありません。そのため治療費の自己負担額は100%です。
もしもの時に、お金を気にせずペットの治療に専念できるよう健康なうちにペット保険に加入することをおすすめします。
また、病気になった後では加入を断られる可能性があります。
ペット保険比較表や記事を活用するのがおすすめ!
ペット保険比較アドバイザーでは、ペットに合った保険の選び方やペットの健康に関するお役立ち記事を公開しております。
記事と合わせて比較表も活用することで、ペットと飼い主様に合った保険を選ぶことができます。
また、保険会社のデメリット等も理解できるので、後悔しないペット保険選びができます。
ペット保険への加入を検討されている方はぜひご活用ください。
補足:先天性疾患が発症する前に!遅くとも7.8歳までには加入しよう
ペット保険は、加入する前に発症している先天性疾患や既に発症している病気や疾患は補償の対象外となります。
そのため、病気になってから保険に加入しようとしても、肝心のその病気の治療費は補償の対象外になってしまいます。
また、加入後に発見できた病気であっても先天性疾患を補償の対象外としているペット保険や、慢性疾患にかかると更新できない保険もあります。
また一般的にペット保険では8~12歳で新規加入年齢を設定していることがほとんどです。早いところでは7歳で新規加入を締め切るペット保険もあります。
「健康なうちに加入しないと意味がない」「また年齢制限に引っかからないから保険の選択肢が広がる」という意味で遅くとも7~8歳までにはペット保険の加入、少なくとも検討をすることをおすすめします。
補足ですが、アニコムやプリズムコールではシニア向けのペット保険商品もあります。しかし保険料も高くなり、補償内容のグレードも普通のプランより下がってしまいます。
高齢・シニア向けのペット保険については下記の記事でも解説していますのでぜひ参考にしてください。
【猫の疥癬症】まとめ
今回、ペット保険比較アドバイザーでは
・疥癬症は感染スピードが早いため、同居猫がいる場合は、発症していなくても感染猫と一緒に駆虫薬などの投与が必要になること
・疥癬症の予防は感染猫と触れ合わないようにすることなので、室内飼育を徹底するだけでも感染のリスクを下げることに繋がるということ