・子犬が水を飲み過ぎる原因
・多飲多尿が見られる犬の疾患
・子犬が水を飲み過ぎた場合の対処方法
子犬の飲水量や尿量の目安は?
子犬は一日に一体どれくらいの水分を飲み、どれくらいの尿を出すのかご存じでしょうか?
【一日の飲水量と尿量の目安】(市販のドライフードを使用している場合)
尿量 :20~40ml/㎏
基本的には体重1キロあたりの飲水量は子犬も成犬も大差はありませんが、子犬の方がやや多めに飲む傾向にあります。
普段はあまり量を気にする必要はありませが、実は水を病的に多く飲むこともあるので基本的な量を知っておくことは大切です。
参考までに、犬に必要な水分量を求める計算式があるので、ご紹介します。
犬が1日に必要とする水分量の目安=体重(kg)×0.75乗×70×(ライフステージ等に応じた係数1.6~2.0→子犬の場合は2.0)(ml)
これはあくまでも「必要とする水分量」であり「飲み水の量」ではないのでご注意ください。
水分は食べ物の中にも含まれているので、飲水量は食べ物によっても異なります。
【食事に含まれる水分量~市販のペットフードの場合】
・ウエットフード : 70~80%
・ソフトドライフード : 10~30%
子犬の水の飲みすぎや多尿を判断するには
「うちの子、水をよく飲むのだけど大丈夫かしら」と気になっている飼い主さんもおられます。新鮮な飲み水を用意しておけば、犬は自分で欲しいときに欲しいだけ飲みます。
ただし「異常に水を飲み過ぎる」場合は、話は別です。
病的に多くの水を飲み、尿量が多い状態を「多飲多尿」と言います。
【多飲多尿にあたる一日量は?】
・多尿:50ml/㎏以上
たくさん水を飲んでも「体内の水分が不足しているから補給する」のであれば、尿量が多くなることはありません。
たくさん水を飲み、飲んだ水分が多量に尿として排泄されるのは要注意です。
「特にたくさん飲んでいるようでもないし、元気だし」「大体いつもこれくらいのんでいるかな?」とおっしゃる方も計測して量を把握しておくことをおすすめします。
そうすることで「いつもと違う」という気づきができて「異常の早期発見」へつながります。
・尿量の測り方
▪ ペットシーツに排尿する子なら、シーツを測る
▪ ペットシーツをいたずらする子なら、すのこ式のトイレを使用しシーツを測る
▪ 粗相をする子なら、拭き取ったティッシュの重さも測る
▪ 外で排尿習慣があるなら採尿に適した容器を持ち歩く 等々。
量の計測が難しいなら、尿の色でもある程度判断できます。水を多く飲むと、自ずと尿の色が薄くなります。
多尿の判断の参考になるもの(補助的な要素)
▪ 排尿時間が長い
▪ 回数が多い
▪ 色が薄い
▪ ペットシーツの汚れ(尿の量)
▪ 下痢や軟便
多頭飼などで、なかなか量の測定が困難な場合、動物病院で尿の比重を調べれば、おおよその飲水量もわかります。
子犬が水をたくさん飲むときの原因
子犬が水を多く飲むのには理由があります。なぜたくさん飲むのか、考えられる原因について説明します。
脱水状態による多飲(生理的なもの)
犬の体の水分は約70%といわれています。子犬の場合さらに水分が多く約80%で、体の中から水分が失われるのが脱水状態です。水が欲しいときに容器が空だったりすると、飲める状態になったとき「水の飲みすぎ?」と思えるくらい、一気に飲む場合もあります。
犬の体から水分が失われるのは
・普段の呼吸
・肉球部などからの発汗
・散歩中のマーキング
・尿や便の成分として排泄
当たり前のことですが、失われた水分を必要に応じて摂取することで健康を保っています。
犬は汗腺が少なく汗をかきにくいので、パンティングによって口や舌から水分を蒸発させて、熱を放出し体温を調節します。 長くパンティングが続いたあとなど、一気に水をのむ光景がよく見かけられます。このタイミングで水が無いと脱水状態になり、体調を崩す可能性もあるので気を付けましょう。
生理的なパンティングは一時的なもので、体温が下がると落ち着きます。
暑い季節や室内が乾燥している場合、運動後や興奮しているときなどもでも、一時的にたくさん水を飲む傾向にあります。
食事の変化に伴う多飲
子犬は成長に連れて食べ物の形態が変わります。離乳食から、やがてドライフードに変更する場合が多いでしょう。。
ウエットフードからドライフードに切り替える時期は乳歯が生えそろう生後3~4か月頃です。それまで水分の多い食事を食べていたのが、ドライフードのみにきりかわると水を飲む量が増えてきます。「水ばかり飲んで大丈夫?」と感じるかもしれませんが、食事に含まれる水分量が減ったためなので心配いりません。
ストレスによる多飲
犬のストレスの要因は実に様々です。
・行動の制限
・環境(気温や騒音など)
・コミュニケーションの不足
・身体の不調
等
犬が強いストレスを感じると副腎皮質からストレスホルモンと呼ばれる「糖質コルチコイド」が分泌されます。そのホルモンの影響で水をたくさん飲むこともあります。
何をストレスと感じているかは飼い主さんが探るしかありません。日ごろからしっかりコミュニケーションをとりながら様子を観察しましょう。
実際にストレスによる多飲(心因性多飲症 )と診断 され、治療が必要になったケースも存在します(日本獣医生命科学大学 獣医内科学教室)
服薬による多飲
内服薬の作用・副作用で水を多く飲む場合があります。
よく知られているものにステロイドホルモン、と利尿剤があります。ステロイドは抗炎症作用や免疫抑制作用が優れており、皮膚科の治療でも使用されます。
利尿剤は体の余分な水分を排泄するための薬で、心臓疾患などでも使用されます。
病気が原因の場合も
子犬の水を多く飲み過ぎる原因が病気によることはごく希ですが、糖尿病や腎臓病、尿崩症などが発症しているケースもあります。
ここでは、子犬に限らず犬が「多飲多尿」を起こす主な病気について説明します。
糖尿病
膵臓から分泌されるインスリンの作用不足のために、体内でブドウ糖が有効に使われず、血糖値が高くなっている状態を指します。血糖値が高いと血液の濃度が濃くなり、浸透圧の関係で周囲の細胞の水分を血液中に引き込んで濃度を薄めようとします。その結果、細胞が脱水状態となり「多飲」→「多尿」となります。
初期症状 | 多飲 多尿 食欲があるのに痩せる |
治療 | 食餌療法 インスリン注射 |
慢性腎臓病
腎臓の最も重要な機能は、血液中の老廃物を体の外に排出するために尿を作ることです。その過程の中で体内に必要な水分や塩分を再吸収する仕組みがあるのですが、腎臓がダメージを受けると再吸収が妨げられます。結果再吸収されなかった水分が尿として排出され(多尿)→「多飲」になります。。
初期症状 | 多飲・多尿が分かりやすく最初に出てくる症状 その後体重減少・元気消失・食欲の低下等
慢性腎臓病ではある程度進行するまで症状が出ないのが特徴です |
治療 | 積極的水分補給(点滴など) 食餌療法 内服薬(進行を遅らせる)等 |
クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)
副腎皮質で作られるステロイドホルモン(グルココルチコイド)が過剰になり、水分の調節に係る脳の働きを鈍らせ、抗利尿ホルモンの働きを抑えるため「多尿」→「多飲」となります。
主な原因は「副腎を管理している脳下垂体の腫瘍による過剰生成(PDH)・「副腎そのものの腫瘍による過剰生成(AT)」です。
初期症状 | 多飲多尿 食欲が旺盛になる 肥満傾向 |
治療 | 原因に応じた治療 |
子宮蓄膿症
細菌感染により子宮に膿がたまる病気です。
細菌の出す毒素(エンドトキシン)が、腎臓で水分の再吸収を促す抗利尿ホルモン(パソブレッシン)の分泌を妨げるため「多尿」→「多飲」となります。
初期症状 | 多飲多尿 腹部膨満 元気消失 食欲減退 など |
治療 | 子宮全摘手術 |
その他にも「多飲多尿」を生じる疾患としては尿崩症・抗カルシウム血症・腎盂腎炎などがあげられます。
また、チョコレートなどの誤飲も要注意です。この場合も水を多く飲む傾向にあります。
子犬の水の飲みすぎへの対処法
「子犬が水をたくさん飲んでいる」と心配になったら飲み水の量をチェックしましょう。犬も個体差があり水を多く飲む犬とそうでない犬がいます。他に何か気になることはないか、注意深く観察しましょう。
自宅で見守る場合は
子犬が水を飲みすぎるケースとしては病的なケースは希ですが、ないわけではありません。
その他、考えられる原因の一つにストレスがあげられます。たくさん水を飲んでいても、それが一時的なものなら心配いりませが、原因を取り除くように努力しましょう。
また、飲水量は基準値内であっても、明らかに普段よりは多い状態が続いているようなら、動物病院で相談しましょう。
緊急性が疑われる、病気の可能性がある場合
子犬が多く水を飲む場合、特に注意しなければならないのは「熱中症」と「誤飲事故」です。
涼しいのでそのまま出かけたら、日中に急に気温が上がり、熱中症をおこしている可能性もあります。水を飲む量が多いほかにも元気がないというような症状はありませんか?子犬の場合なるべく早く受診しましょう。
また、誤飲事故(中毒性のあるものを食べた)場合水を多くのむことがありますが、何らかの他の症状や異変も生じているはずです。子犬の誤飲事故は、早急な対処が必要です。様子を見ていると命とりになる場合もあります。
よくある質問
子犬が水を飲みすぎるように感じています。決まった量を与えた方がよいのでしょうか?
犬の水中毒とは何ですか?
ペット保険は必要?
ペットには公的な保険制度がありません。そのため治療費の自己負担額は100%です。
もしもの時に、お金を気にせずペットの治療に専念できるよう健康なうちにペット保険に加入することをおすすめします。
また、病気になった後では加入を断られる可能性があります。
ペット保険比較表や記事を活用するのがおすすめ!
ペット保険比較アドバイザーでは、ペットに合った保険の選び方やペットの健康に関するお役立ち記事を公開しております。
記事と合わせて比較表も活用することで、ペットと飼い主様に合った保険を選ぶことができます。
また、保険会社のデメリット等も理解できるので、後悔しないペット保険選びができます。
ペット保険への加入を検討されている方はぜひご活用ください。
子犬が水を飲み過ぎるのはストレスのせい?原因や適量についても解説 まとめ
今回、ペット保険比較アドバイザーでは
・子犬が水を飲み過ぎる原因
・多飲多尿が見られる犬の疾患
・子犬が水を飲み過ぎた場合の対処方法