犬がしきりに目を気にしている。
そんな様子が見られたら「ものもらい」ができているのかもしれません。
目のふちに何か異変はありませんか?
犬の場合、たかが「ものもらい」と軽んじるのは禁物です。
・「犬のものもらい」を放置したらどうなるのか
・「犬のものもらい」飼い主さんにできること
「ものもらい」とは
「ものもらい」は人でもよく見かけられる症状で、瞼にニキビ様のできものができて腫れたり、イボのようなしこりができた状態を言います。「めいぼ」「めばちこ」「めぼ」などとも呼ばれますが、正式な定義はありません。病名で言うなら麦粒腫を指すことが多いですが、霰粒腫(さんりゅうしゅ)も含めて「ものもらい」という場合もあります。
【犬のものもらい】原因と症状
「ものもらい」は、飼い主さんも経験したことはありませんか?
犬にでも人と同じような原因で発症します。
ものもらいが発生する主な理由
ここでは、俗に「ものもらい」と呼ばれる「麦粒腫」「霰粒腫(さんりゅうしゅ)」とそれによく似ているマイボーム線腫を含めて説明します。
【まぶたにできる主なしこり】
原因 | 主な症状 | 治療法 | |
マイボーム線腫 | 良性腫瘍 | 大きくなると角膜を刺激 | 外科的治療 |
麦粒腫 | 細菌感染 急性化膿性疾患 |
痛み 痒み 腫れ 目やに 化膿 など |
内科的治療が主 |
霰粒腫 (さんりゅうしゅ) |
マイボーム腺の詰まり | まぶたの裏側にしこり | 温罨(おんあん)法 切開 |
- マイボーム腺とは
- 上下眼瞼(まぶた)のまつ毛の生え際よりもやや内側に一列に並んでおり、油分を分泌する器官のことです。マイボーム腺から分泌された油分は、涙が蒸発するのを防ぎ、まばたきを滑らかにする役割を担っています。
【麦粒腫】
・内麦粒腫 ⇒ 瞼の深い所にあるマイボーム腺が細菌感染を起こす
・原因菌 : 常在菌(皮膚などに付着しているありふれた菌 黄色ブドウ球菌など)
・原因 : 菌の付着した足で目を擦る など
【霰粒腫】
典型的な霰粒腫は痛みを伴いません。
瞼の裏に白いニキビのようなしこりが認められます。
しこりのようなものの正体はマイボーム腺から分泌される脂肪や分泌物が溜まったものです。
マイボーム腺に皮脂が詰まり炎症を起こすと、麦粒腫同様の症状を示すこともありますが、原因が異なるために治療法も異なります。
【マイボーム線腫】
高齢犬に比較的よく見られるマイボーム腺にできる良性の腫瘍
原因:マイボーム腺の腫瘍化
犬特有のものもらいの原因
【犬のものもらいができやすい原因】
免疫力が低いと、病原体に対して抵抗力が弱く病気にかかりやすくなり、局所的な細菌感染も起こしやすくなります。
子犬は、母犬の初乳から得た獲得免疫が生後2ヶ月くらいから薄れていきます。
犬にもともと備わっている自然免疫も子犬期は成犬に比べると弱いため、母親から譲り受けた免疫が切れたあと自分の免疫機能がしっかりと備わるまでの間は感染しやすい時期と言えるでしょう。
アレルギー体質の犬は、既に粘膜や皮膚に炎症が起きて、細菌に感染しやすい状態になっている可能性もあります。
さらに、目やその周囲にアレルギー症状があると目をこするために細菌感染を招きやすくなります。
免疫機能が低下すると、細菌やウイルスの侵入に対する防御力が低下するため起こりやすくなります。
瞼が被毛でおおわれている長毛種は要注意です。
自分の毛が目や瞼を傷つけやすいため、その部分に細菌感染が起こる可能性があります。
細菌感染が引き起こすケースとアレルギー反応
ものもらいで炎症を引き起こしている場合、大きく分けて2つの原因があります。
同じような症状を呈しますが、対処法は異なるので識別が重要となります。
細菌感染が原因なので、主に抗生剤や抗菌剤の目薬や内服薬で治療を行います。
マイボーム腺が塞がってしまうと、産生された油分が濃縮され固まります。
この塊に対し、アレルギー反応(体が反応して攻撃する)を起こすと赤く腫れてきます。
炎症に対しては、麦粒腫同様に抗生剤の使用をすることもありますが、マイボーム腺の詰まりが原因なのでそれだけでは根本的な治療にはなりません。
【犬のものもらい】放置するとどうなる?
ものもらいができた場合、触らないことが大前提です。
人の場合、放置しておいても化膿した部分から膿が出れば自然に治癒することもあります。
犬の場合、不快感から目を擦りつけたり、足で引っかいてしまいます。
放置すると治るまでに時間がかかるのみならず、最悪の場合は視力に障害がでる可能性もあります。
感染拡大と健康リスク
犬のものもらいも自然治癒する可能性もあり得ますが、すぐに治るわけではありません。
放置すると感染範囲が広まり、治療に時間がかかってしまいます。
さらに、治ったように見えても奥深くに細菌が残り、再発を繰り返す可能性もあります。
ものもらは免疫が低下した状態で起こりやすいため、目だけにフォーカスするのではなく、他の症状はないか全身状態のチェックにも気を配りましょう。
視力に関わる深刻な合併症
犬が目を気にして目をひっかいた場合、角膜に傷がつく可能性があります(角膜炎・角膜潰瘍)。
角膜は痛覚が発達しており痛みも伴うため、さらに気にして目を擦り、それを放置すると悪化の一途をたどります。
角膜(黒目の部分の一眼外側にある膜)は表面から上皮・実質・デスメ膜・内膜の4層で形成されています。
角膜上皮は傷ついても再生しますが、角膜実質が傷つくと手術が必要になり、最悪の場合、視力に影響が残ります。
犬が目を気にしているようなら、なるべく早期に動物病院を受診しましょう。
治療が困難になる可能性
まぶたにできるマイボーム線腫は、高齢の犬に比較的よく見られる良性の腫瘍です。
良性腫瘍であったとしても、摘出部分がまぶたの幅の3分の1を超えたらまぶたの温存が難しく、最悪の場合は眼球を摘出することもあります。
【犬のものもらい】適切な初期対応が大切!処置とホームケア方法
では、実際に愛犬にものもらいができたらどのように対処したらよいのでしょうか。
獣医師への相談タイミングと診察の重要性
犬の目に何かできものができていると気づいたら、なるべく早く動物病院を受診しましょう。
見た目には目立たないように思えても、犬は違和感があると目を擦ってしまいます。
犬が目を気にするということは「悪化させる」ことに結びつきます。
ものもらいは早期に対処すれば簡単に治りますが、タイミングを逸すると悪化して治療が長引くでしょう。
自宅でできるケアと応急処置
ものもらいができたら、汚れた手で触らないことが第一です。
と言っても、犬の場合そんなことができるはずもありません。
目やにがでていれば、清潔なコットンなどで優しく拭き取ってあげましょう。
犬が目に触るのを防止するためには、エリザベスカラーを用意しておくと便利です。
霰粒腫の場合、マイボーム腺の詰まりが原因です。
マイボーム腺が詰まると油分が中に溜まって固まるため、防止するためには温めたり、マッサージが効果的なこともあります。
【犬のものもらい】治療法・予防策は?生活習慣の改善が大切
目の周りを清潔に保つことが効果的な予防方法ではあるものの、犬は人間のように汚れた手で目の周りを触らないように注意することができません。
投薬治療とその効果、外科手術の可能性
【麦粒腫の治療】
・化膿していれば切開して排膿することもある
麦粒腫は細菌感染が原因なので、抗生剤・抗菌剤などのた点眼薬・眼軟膏・内服薬による治療を状態に応じて行います。
早期に治療すれば1週間程度で症状の改善が見られます。
【霰粒腫の治療】
・眼瞼を蒸しタオルで温めて固まった分泌物を溶かす
・眼瞼の縁を清潔なコットンで拭き角化組織を取り除き導管の開口部を開く
・手術
手術内容としては、結膜を切開して溜まったものを取り除く外科手術や、マイボーム腺と導管、開口部を含めて霰粒腫を切除する方法があります。
【マイボーム腺腫の治療】
・小さければ様子観察
・大きくなれば手術による切除
予防策としてのライフスタイルの改善
【ものもらいを予防するための対策】
免疫機能を低下させないように気を付けましょう。
健康で免疫機能が正常であれば、目に細菌が付着しても感染を起こしにくい状態です。
【免疫低下の原因】
・運動不足
・栄養不足
・ストレス
これらを回避するために、お部屋の気温や湿度の調整をはじめとした環境の整備を行います。
しっかりとスキンシップを取りながら状態の観察をし、散歩や室内遊びなど犬と関わる時間をしっかりと確保したいものです。
目の周囲の衛生管理とアレルギー対策
目の周囲を清潔に保つことが大前提です。
目やにがあればぬるま湯で湿らせたガーゼやコットンを使用し、かたくこびりついた目やになどもふやかして取り除きましょう。
特に長毛の犬種では普段目の様子を見ることが少ないので、毎日のケアの中で確認しましょう。
マイボーム腺からの分泌物をスムースにするためにはまぶたをあたためたり、マッサージが有効なこともあります。
また、ものもらいは目の周りにアレルギー反応や傷がついていると細菌感染を起こしやすくなるため、ドライアイや目の周囲の皮膚病のコントロールは重要です。
【犬のアレルギーの原因と対処法】
・食物アレルギー
・ノミアレルギー
犬のアレルギーによる皮膚トラブルを防ぐには、肌の保湿対策をしておくことも必要です。
アレルギーによる皮膚炎は、肌のバリア機能が低下すると発症しやすい傾向にあるため肌の保湿はアレルギー皮膚炎のリスクを軽減できます。
食物アレルギーは、主に食べ物の中に含まれるタンパク質に対するアレルギー反応です。ご家庭の犬に合った食事を与えましょう。
ノミアレルギーの場合は、ノミの駆除薬を使用します。
よくある質問
犬の目の下にものもらいができています。どうやって治すのでしょうか?
犬の目頭に赤いできもののようなものができています。腫瘍なのでしょうか?
ペット保険は必要?
ペットには公的医療保険制度がありません。そのため診療費の自己負担額は100%です。
もしものときに、お金を気にせずペットの治療に専念できるよう健康なうちにペット保険に加入することをおすすめします。
また、病気になった後では加入を断られる可能性があります。
ペット保険比較表や記事を活用するのがおすすめ!
ペット保険比較アドバイザーでは、ペットに合った保険の選び方やペットの健康に関するお役立ち記事を公開しております。
記事と合わせて比較表も活用することで、ペットと飼い主様に合った保険を選ぶことができます。
また、保険会社のデメリット等も理解できるので、後悔しないペット保険選びができます。
ペット保険への加入を検討されている方はぜひご活用ください。
【犬のものもらいは 放置しても大丈夫? 原因や治療法も解説!】まとめ
今回、ペット保険比較アドバイザーでは
・「犬のものもらい」を放置したらどうなるのか
・「犬のものもらい」飼い主さんにできること