この記事では
・猫の膿皮症の治療方法
・猫の膿皮症の予防方法
猫の「膿皮症」とは
猫の膿皮症は、皮膚が細菌により炎症を起こして患部が膿んでしまう皮膚病です。皮膚の表面から深い場所まであらゆる場所で発症する可能性があります。
発症箇所や病気の進行具合によって、人間のニキビのようなものから、硬いしこりおできのようなものまで、症状もさまざまです。
猫が普段より毛づくろいが多かったり、やたらと体をかいていたりしたら注意してみてください。脱毛がある場合も膿皮症の可能性があります。
猫の膿皮症ってどんな病気?
猫の膿皮症は、皮膚に常在するブドウ球菌が異常繁殖することが原因で起こる化膿性の皮膚病です。
さまざまな原因により皮膚に炎症が起こり、患部が膿んでしまいます。
猫の皮膚は上から「表皮」、「真皮」、「皮下組織」に分かれていて、どこの部分でも膿皮症が発症する可能性があります。
以下では猫の皮膚の構造について解説します。
表皮
皮膚の一番外側にあり、ケガによる傷や細菌から体を守るバリア機能と皮膚に必要な水分やミネラルなどが逃げないようにする保湿機能があります。
表皮は以下の
- ・角質層(かくしつそう)
・顆粒層(かりゅうそう)
・有棘層(ゆうきょくそう)
・基底層(きていそう)
という4つの層からできていて、バリア機能は主に角質層が担っています。またケラチンと呼ばれるタンパク質と脂質により、防水性を保っています。
ちなみに猫の皮膚は非常に薄く、人間の皮膚(1.5~3mm)の5分の1から6分の1ほどです。
真皮
真皮は皮膚の大部分を占め、表皮の下にあり皮膚の形や弾力を保つ働きを持つ層です。
「コラーゲン」という線維状のたんぱく質がその大部分を占めます。
また「エラスチン」と呼ばれる主にコラーゲン同士を結びつける働きを持つ繊維状のたんぱく質や、ゼリー状の「ヒアルロン酸」で構成されています。
コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸によって、皮膚に弾力が与えられています。
この層には
- ・神経
・血管
・リンパ管
などの組織も含まれています。
毛包(もうほう)
毛包は真皮から表皮を貫くように存在しする毛穴を含む体毛を生やすための細胞の集まった器官で、発毛や皮膚呼吸による水分の発散や皮脂の分泌を体内から体外へ行っています。
猫の毛包は一つの毛穴に
- ・オーバーコートと呼ばれる主毛
・アンダーコートと呼ばれる複数の副毛
が混在する「複合毛包」という構造になっています。
猫の被毛は夏と冬で生え変わり、体温調節の役割も果たしています。
皮下組織
皮下組織とは真皮の下にある層で真皮と筋肉に挟まていて、主に皮下脂肪から成り立っています。
猫の膿皮症の分類
猫の膿皮症は膿ができる場所や症状の進行具合によって3種類に分けられています。以下ではそれぞれの膿皮症について解説します。
①表面性膿皮症
表皮の一番上にある角質層に発生した膿皮症で、皮膚の上で細菌が増殖している皮膚炎です。
②表在性膿皮症
表在性膿皮症とは、毛包(もうほう)とその付近の表皮に感染が起こっている皮膚炎です。
膿皮症の中で一番多くみられる症状で、痒みを伴います。
③深在性膿皮症
深在性膿皮症は毛包全体や、真皮、皮下組織まで感染が広がっている皮膚炎です。
この段階になると、痒みよりも痛みを伴います。
表在性膿皮症と深在性膿皮症をはっきりと分けることは難しいですが、感染の深さによって分類されます。
猫の膿皮症の症状と原因
猫の皮膚には体を守るために常在菌と呼ばれるブドウ球菌がいますが、健康なときは悪さをすることがありません。ブドウ球菌は外部からの病原体の侵入を防ぐ、バリアの役割を果たしています。
しかし何らかの原因で体の免疫力が低下すると皮膚のバリア機能も低下し、ブドウ球菌が皮膚を攻撃し始めます。ブドウ球菌と免疫細胞の戦いにより炎症が起き、免疫細胞が死滅していくことで皮膚や毛穴などが膿んでいきます。膿は免疫細胞の死骸です。
ひどい場合はおできなどのしこりができ、皮膚の一部がえぐれてはがれ落ちてしまいます。以下では発生場所によって分類された膿皮症の原因と症状を解説します。
①表面性膿皮症の症状と原因
表皮の一番上にある角質層に発生した表面性膿皮症には
- ・化膿外傷性皮膚炎(かのうがいしょうせいひふえん)
・皮膚皺襞膿皮症(ひふしゅうへきのうひしょう)
などがあります。
おもな症状は
- ・皮膚の赤み
・痒み
・患部の化膿
です。
化膿外傷性皮膚炎【ホットスポット】
症状は皮膚の上にできた傷が化膿した状態になります。原因は患部の掻きむしりなどにより角質層の破壊です。
- ・外傷やかきむしった傷
・猫ニキビやノミアレルギーによる皮膚のかゆみ
・過剰な湿度による細菌の繁殖
・毛づくろい不足による被毛内の換気の悪化
など皮膚のバリアが低下することで起こります。
また、体温や湿度が逃げにくい長毛種もなりやすい病気です。
皮膚皺襞膿皮症【間擦疹(かんましん)】
症状は皮膚のしわの間に炎症がおきて、膿がたまった状態になります。
原因は皮膚のしわで、表面同士が互いにこすれ合う部分の湿気が逃げにくいため、こすれた刺激や細菌などが原因で炎症を起こします。ヒマラヤンやペルシャ猫など、顔の皮膚のしわができやすい品種に多いです。
②表在性膿皮症の症状と原因
毛包(もうほう)とその付近の表皮に感染が起こる表在性膿皮症には
- ・膿痂疹(のうかしん)
・表層性細菌性毛包炎(ひょうそうせいさいきんせいもうほうえん)
・表層性拡散性膿皮症(ひょうそうせいかくさんせいのうひしょう)
・皮膚粘膜膿皮症(ひふねんまくのうひしょう)
などがあります。
初期段階では丘疹(きゅうしん)と呼ばれる1cm未満の赤いブツブツや、膿疱(のうほう)と呼ばれる人間のニキビのような膿が溜まった膨らみが出来ます。
小さなニキビのようなブツブツに膿が溜まり始め、溜まった膿が破れてしまい、ドーナツ状のフケやかさぶたが出来たり脱毛したりします。
膿痂疹
「とびひ」と呼ばれる症状で、黄色いカサブタができます。細菌感染がおもな原因です。
表層性細菌性毛包炎
毛包に細菌が入り炎症が起き、化膿した状態の膿皮症を言います。
膿皮症の中で一番多くみられる症状で、痒みを伴います。犬ではよく見られますが、猫では珍しい病気です。
表層性拡散性膿皮症
背中に多く見られ、炎症がひどくなり、膿が出た状態で大きな輪状紅斑が表れます。
皮膚粘膜膿皮症
口唇や眼瞼、外陰部、肛門などの粘膜に炎症が起き化膿した状態の膿皮症です。
③深在性膿皮症の症状と原因
毛包全体、真皮、皮下組織など皮膚の深い部分で炎症が起こる深在性膿皮症には、
- ・深層性毛包炎(しんそうせいもうほうえん)
・せつ腫症(せつしゅしょう)
などがあります。
深層性毛包炎
表皮の下にある真皮にまで炎症が及んだ状態の膿皮症です。毛包炎が毛包全体に広がってしまい真皮が侵され、痛みを伴います。
せつ腫症
いわゆるおできのことで、幹部にしこりができてしまいます。
- ・細菌性毛包炎
・ニキビダニ症
・皮膚糸状菌症
・毛包角化不全症
猫の膿皮症の治療法は?治療費はいくら?
猫の膿皮症の多くは基礎疾患があり二次感染として発症するため、症状へのアプローチと同時に基礎疾患の治療が必要です。治療法としては、主に以下のようなものがあります。
局所療法
局所療法はおもに表面性膿皮症の治療として行われます。
患部に直接作用する
- ・薬浴
・抗菌シャンプー
・抗菌クリームや軟膏
による治療が行われます。
薬浴は薬剤を含んだ温水に10〜15分間患部を浸し、かゆみや痛みを和らげ皮膚の血流を促進する効果があります。
抗菌シャンプーは壊死した組織や幹部から漏れ出る液体を除去するのに有効です。抗菌クリームや軟膏は顎の下や指の間など局所化した患部に対して効果があります。
投薬治療
投薬治療は表在性、深在性膿皮症の治療として全身に効果を発揮する抗生物質の投与が行われます。
表在性では最低3週間、深在性では最低6週間の投薬期間が必要で、症状がおさまってからも再発の危険性を考え、1~2週間は様子をみて投薬を続けます。
膿皮症の程度と猫の免疫力を考慮して、適切な抗生物質が投与されます。
基礎疾患の治療
膿皮症の原因になる基礎疾患がある場合は、そちらの治療を優先させます。
おもな基礎疾患は以下のとおりです。
- ・甲状腺機能低下症
・クッシング症候群
・脂漏症
・ニキビダニ症
・皮膚糸状菌症
・毛包角化不全症
治療費
膿皮症の治療は症状にもよりますが、およそひと月ほどで完治します。
症状や治療の内容、病院によっても差はありますが、週1回通うとすると1回の治療費がおよそ4~5千円ほどですので、1カ月だと1万6千~2万円ほどです。
猫の膿皮症の予防法は?
猫の膿皮症を予防するためには皮膚の健康を維持することが予防につながります。以下では具体的な方法について解説します。
適切なメンテナンス
猫の場合、犬のようにトリミングを行ったりシャンプーをしたりといった習慣がないかもしれません。猫の場合はブラッシングがおもな被毛のメンテナンスになります。
換毛期と呼ばれる抜け毛が多い季節だけでなく普段からスキンシップも兼ねてブラッシングを行っていれば、猫の皮膚の異常も気づきやすいでしょう。
もちろんシャンプーが可能ならシャンプーも効果的ですが、やりすぎは逆効果ですので月に1回を目安に行ってください。
食事も皮膚被毛ケアのフードを選ぶことで皮膚の健康を保ち、病気の予防につながります。
顔にしわが多い猫種の場合、1日1回しわの間を濡れたタオルで拭いてあげるとよいでしょう。
寄生虫の管理
ノミやダニなどの寄生虫を駆除することで、膿皮症を予防できます。市販のノミとり首輪や薬、病院での予防薬の定期投与が有効です。
ノミやダニが好む環境は温度18~27℃で湿度70%程度ですので春先から秋の終わりくらい(4~11月ころ※地域によります)までは毎月予防するのが好ましいでしょう。
ストレス管理
猫はストレスを感じると、同じ場所を何度も執拗に舐めることがあります。そのため炎症を起こして膿皮症になるため、予防するには猫のストレスを除去する必要があります。
またストレスは免疫力を下げてしまうため、病気がひどくなることもあるのでストレス緩和は重要です。
おもに環境の変化が1番のストレスになりやすいため、
- ・引っ越しなどの環境変化
・家族の増減
・運動不足
・生活環境の衛生面
などに気をつけ、猫がストレス発散できるよう生活環境の見直しや、一緒に遊んだりスキンシップをはかったりと猫のストレスを緩和するよう心がけましょう。
温度と湿度の管理
膿皮症の原因となるブドウ球菌はおよそ温度28℃以上(最も活発に増えるのは35℃前後)、湿度70%以上で繁殖力を強めます。
室内環境を整えることで膿皮症の予防につながります。
あくまでも目安ですが
- ・室温は26℃前後
・湿度は50~60%
を超えないように、エアコンや除湿器を利用して管理することをおすすめします。
補足:先天性疾患が発症する前に!遅くとも7.8歳までには加入しよう
ペット保険は、加入する前に発症している先天性疾患は補償の対象外となります。
そのため、病気になってから保険に加入しようとしても、肝心のその病気の治療費は補償の対象外になってしまいます。
また、加入後に発見できた病気であっても先天性疾患を補償の対象外としているペット保険や、慢性疾患にかかると更新できない保険もあります。
また一般的にペット保険では8~12歳で新規加入年齢を設定していることがほとんどです。早いところでは7歳で新規加入を締め切るペット保険もあります。
「健康なうちに加入しないと意味がない」「また年齢制限に引っかからないから保険の選択肢が広がる」という意味で遅くとも7~8歳までにはペット保険の加入、少なくとも検討をすることをおすすめします。
補足ですが、アニコムやプリズムコールではシニア向けのペット保険商品もあります。しかし保険料も高くなり、補償内容のグレードも普通のプランより下がってしまいます。
高齢・シニア向けのペット保険については下記の記事でも解説していますのでぜひ参考にしてください。
よくある質問
猫の膿皮症は他の動物や人間にうつりますか?
猫の膿皮症にかかりやすい年齢、猫種などありますか?
表在性膿皮症は、猫ではほとんど見られていません。表面性膿皮症は、ペルシャ猫やヒマラヤンなど顔の皮膚のしわが多い猫に発症しやすいです。またシニアになると免疫力が下がるため、皮膚病にかかりやすくなります。
ペット保険は必要?
ペットには公的な保険制度がありません。そのため治療費の自己負担額は100%です。
もしもの時に、お金を気にせずペットの治療に専念できるよう健康なうちにペット保険に加入することをおすすめします。
また、病気になった後では加入を断られる可能性があります。
ペット保険比較表や記事を活用するのがおすすめ!
ペット保険比較アドバイザーでは、ペットに合った保険の選び方やペットの健康に関するお役立ち記事を公開しております。
記事と合わせて比較表も活用することで、ペットと飼い主様に合った保険を選ぶことができます。
また、保険会社のデメリット等も理解できるので、後悔しないペット保険選びができます。
ペット保険への加入を検討されている方はぜひご活用ください。
ペット保険比較アドバイザーでは公式LINEでの「ペット保険の適正診断」「保険相談サービス」を開始いたしました。
従来の比較表だけではわかりづらいペット保険の補償内容の範囲や充実度を踏まえたうえで、保険の募集人資格 を持った、ペット保険のプロが提案させていただきます。
【猫の膿皮症はどんな病気?膿皮症の種類や治療法、予防法について解説】まとめ
今回、ペット保険比較アドバイザーでは
- ・猫の膿皮症の種類
・猫の膿皮症の治療方法
・猫の膿皮症の予防方法