この記事では
・混合ワクチンの種類と必要性
・高齢犬のワクチン接種とリスク
「犬の混合ワクチン」とは
犬の混合ワクチンとは、犬の伝染病を予防するためのワクチンです。複数のワクチンを1本にまとめているため混合ワクチンと呼ばれ、組み合わせによって2種混合から11種混合までがあります。
混合ワクチンは任意接種ですが全ての犬に接種が推奨される「コアワクチン」と生育環境によって推奨される「ノンコアワクチン」があります。
犬のワクチンの基礎知識
犬のワクチンには法律で接種を義務付けられている「狂犬病ワクチン」と任意で行うその他のワクチン(混合ワクチンなど)があります。ここでは具体的にそれぞれのワクチンがどのようなものなのか説明します。
狂犬病ワクチンについて
狂犬病の予防接種は1950年に定められた「狂犬病予防法」によって全ての犬に義務づけられています。
狂犬病とは、狂犬病ウイルス(Rabies Virus)に感染している犬などに咬まれたり引っ掻かれたとき、傷からウイルスが侵入(主に唾液)することで感染します。ヒトを含むすべての哺乳類に感染する危険性があり、発症すると100%死亡します。
【狂犬病の症状】
不末期症状:錯乱・幻覚、攻撃的状態、水を怖がるなどの脳炎症状を 最終的には昏睡から呼吸停止で死亡
日本では昭和32年(1957)以降は発症が見られていません(狂犬病清浄国)が、海外で感染して日本で発症した例が数例あります。
【狂犬病清浄国】
混合ワクチンについて
混合ワクチンはコアワクチン・ノンコアワクチンの2種類に分類されている任意接種のワクチンです。
コアワクチン:感染力が強く死亡率も高い感染症で次の4疾患に対するワクチンです。
ノンコアワクチン:生育環境によって接種を推奨されているもの
犬混合ワクチンは2種から11種までがあります。それぞれに含まれているワクチンは次の通りです。
【コアワクチン】
2種 | 3種 | 4種 | 5種 | 6種 | 7種 | 8種 | |
犬ジステンバー | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
犬伝染性肝炎 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
犬アデノウイルスⅡ型 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
犬パルボウイルス | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
【ノンコアワクチン】
犬パラインフルエンザ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
犬コロナウイルス | 〇 | 〇 | |||||
犬レプトスピラ (イクテモヘモラジー型) |
〇 | 〇 | |||||
犬レプトスピラ (カニコーラ型) |
〇 | 〇 |
※ レプトスピラにはいくつかの種類があり、型が異なると予防効果がありません。9~11種混合ではレプトスピラの異なる型のワクチンが追加されます。
感染するとどんな症状になるの?
ここでいくつかの疾患の症状について説明します。
混合ワクチン対象疾患の症状
【犬ジステンバーウイルス感染症】 感染力も強く、感染すると50~70%死亡する
・次いで : 高熱、嘔吐、膿のような鼻汁、結膜炎などに伴う目ヤニ、咳、くしゃみ、元気を消失
・末期 : 脳にウイルスが及び、異常行動、けいれん、下半身麻痺 など
【犬伝染性咽頭気管支炎(犬アデノウイルスⅡ型)】 単独では重症化することは少ない
他のウイルスや細菌に感染すると肺炎などの二次感染を起こし重症化する。
【パルボウイルス感染症】 重症化すると敗血症を起こし多臓器不全で死亡することもる
小腸の粘膜に感染を起こすため消化器症状が非常に強い 子犬では心筋炎を起こすことがある
【犬伝染性肝炎(犬アデノウイルスⅠ型)】
続いて肝臓に炎症(肝機能不全)を起こすと重篤な状態となる
【犬レピストラ感染症】
感染した動物(ネズミなど)の排泄物で汚染された水や土壌へ接触することで感染する
症状:発熱 嘔吐 粘膜の充出血 黄疸
重症になると肝・腎臓の障害をおこす
洪水や土砂災害、地震などの後で発症率高くなる
狂犬病ワクチンは必要なのか?
狂犬病が長年発症していない日本で、なぜワクチン接種が必要なのでしょうか。
「いらない」という意見があるのも確かです。
なぜそんなに必要とされるの?理由を解説!
平成15年3月27日付けの朝日新聞朝刊「私の視点」のコラムに診療医師・加沼戒三氏の「狂犬病 無駄な予防接種をやめよ」と題する意見が掲載され物議をかもしました。それに対して日本獣医師会の見解が発表されていますのでご覧ください。
予防接種は「今の状態をキープするため」に必要です。予防接種と検疫による水際対策が功を奏して現在では発症していませんが、世界では今でも年間5万人が狂犬病で命を落としており、最も多いのがアジアです。
近年、狂犬病のワクチン接種率が少し低迷してきており、登録犬の7割程度にとどまっています。未登録犬も含めると実質4割程度ということになります(産経WEST)。もし、日本に狂犬病が入ったときに大流行を防ぐためには接種率が70%は必要と言われています。
狂犬病ワクチンの接種が猶予される例を紹介!
狂犬病予防法では、高齢犬も生きている限りワクチン接種が義務付けられています。
予防接種が猶予されるのは以下の通りです。
(狂犬病予防法に定められているものではなく日本獣医師会が定めたもので、狂犬病予防接種不適当犬は接種が猶予されます)
狂犬病予防接種ガイドライン(日本獣医師会)によると狂犬病予防接種不適当犬とは
狂犬病予防注射を受けることが適当でない犬を指し、これらの犬には注射を行ってはならず、猶予証明書を発行する。
と定めています。あくまでも「免除」ではなく「猶予」です。
【狂犬病予防接種不適当犬】とは簡単にまとめると
・重篤な疾患に罹っていることが明らかな犬
・重篤な心不全、急性期や増悪期の腎不全
・以前にアナフィラキシーショックを起こした犬
※重篤とは「死に係るような病態」を指します、
また、注射要注意犬(状態を見て猶予するか否かを判断する)としては
・心臓、腎臓、肝臓、血液、栄養障害などの基礎疾患のある犬
・過去に痙攣をおこしたことがある
・妊娠中(妊娠中期のみ接種可)
・強度の興奮
としています。
混合ワクチンは必要なのか?
それでは任意接種である混合ワクチンではどうでしょうか。
混合ワクチンの中でもコアワクチンは「すべての犬が接種するよう強く勧告されている」ワクチンです。
ワクチン接種は「犬の健康を守るため」に必要です。ワクチンを接種することで、重症化や、流行しやすい感染症から犬を守ることができます。
混合ワクチンの接種を推奨できない例
混合ワクチンも推奨できない例は狂犬病に準ずると思われますが、次のような場合が考えられます。
・過去に混合ワクチンに対するアレルギー反応がでた
・なんらかの免疫疾患を発症している
・腫瘍に代表される消耗性の病気を発症している
高齢になって体力低下している場合、外部との接触が少なくなった場合など、獣医師と相談して決めましょう。
接種するワクチンの種類について選ぶポイントを解説!
ワクチンの種類を選ぶときの基準
・普段どこで生活しているか(家のある場所や周囲の環境)
・どこに出かけるか
基本的には、普通の住宅地で暮らす室内犬の場合は、5種か6種の混合ワクチンが一般的です。
完全室内飼いのためワクチンは必要ない・打たないと考える飼い主さんもいますが、予防接種をしていないとトリミングサロンやペットホテル、ドッグランなどの利用ができないこともあるので、注意が必要です。
また、ワクチン接種で防げる病気は、発症してもワクチン接種をしていないとペット保険では補償されません。
山や川の近くに住んでいる、頻繁に山やその近くにでかけるという犬はレプトスピラの含まれている7種以上のワクチンをお勧めします。
ワクチンの接種は、WSAVA(世界小動物獣医師会)のガイドライン【犬と猫のワクチネーションガイドライン】に倣って行っている動物病院が多いようです。
WSAVAではコアワクチンは1回の接種で抗体を長く保持することができるため3年に一度の接種を推奨しており、日本でもその取り組みを実施している動物病院も出てきています。ちなみにノンコアワクチンは毎年の接種が必要です。
高齢犬でも散歩に出たり、トリミングサロンなどを利用する場合は、少なくともコアワクチンを打っておくと安心です。それぞれの生活形態を踏まえて混合ワクチンの種類の変更なども獣医師と相談して検討しましょう。
老犬は副作用のリスクが高まるの?
高齢になると犬も体力や免疫力が低下してきます。
副作用のリスクを抑える方法
人間と同様、犬もワクチン接種後に副作用が出る場合があります。
【副作用】は次の2種類です。
・アレルギー反応
・アナフィラキシー(アレルギー反応の中でも重篤なもの 急性アレルギー反応)
【アレルギー反応】・・・1~3日後に出現
症状 : 顔の腫れや浮腫み 全身の痒みや湿疹 嘔吐 下痢 食欲不振 細かな震え 発熱 元気がない など
発症率: 1%程度
多くの場合は静かにして様子をみていれば回復します。心配な症状があれば動物病院で相談しましょう。
【アナフィラキシー】・・・数分~1時間以内が一般的
発症率: 0.002%程度
【副作用を防ぐための注意点】
・午前中に受ける(副作用が出た時の対応ができる)
・接種後はしばらく待合室や車の中などで様子をみる
・接種後は激しい運動や興奮は抑える
・ストレスを回避し、静かに過ごす
補足:ペット保険でワクチン費用は補償されない?
全てのペット保険で犬のワクチンの費用は補償の対象外となっています。
ペット保険では原則的に治療に対して補償されるもので、ワクチンや健康診断といった健康体に行われる予防目的の行為にかかる費用は補償の対象外とされています。
また、ワクチンで予防できる病気に対しても、補償の対象外と定められています。しかし、ワクチンをしていたのにも関わらず発症してしまった場合については補償が認められるケースが多いです。
保険会社によって、ワクチン接種から、〇ヶ月以降は補償が認められる等、若干の違いがあるので重要事項説明書や保険約款を確認することをおすすめします。
よくある質問
狂犬病のワクチン接種をしていない犬に噛まれたらどうすればよいのでしょうか?
17才のチワワですが、犬の混合ワクチンは何才まで打つ必要がありますか?
ペット保険は必要?ワクチン接種費用は補償の対象外
ペットには公的な保険制度がありません。そのため治療費の自己負担額は100%です。
しかし、あくまで治療行為に対して補償が適用されるので、予防目的であるワクチン接種の費用は全てのペット保険で補償の対象外です。
また、ワクチンで予防できるとされている病気に関しても、ワクチン接種をしていないためにかかった場合はその治療費が補償されません。※ワクチン接種していてもかかってしまった場合は補償されるケースが多いです。
もしもの時に、お金を気にせずペットの治療に専念できるよう健康なうちにペット保険に加入することをおすすめします。
また、病気になった後では加入を断られる可能性があります。
ペット保険比較表や記事を活用するのがおすすめ!
ペット保険比較アドバイザーでは、ペットに合った保険の選び方やペットの健康に関するお役立ち記事を公開しております。
記事と合わせて比較表も活用することで、ペットと飼い主様に合った保険を選ぶことができます。
また、保険会社のデメリット等も理解できるので、後悔しないペット保険選びができます。
ペット保険への加入を検討されている方はぜひご活用ください。
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【犬の混合ワクチンは何歳まで必要?狂犬病ワクチンの必要性も解説!】まとめ
今回、ペット保険比較アドバイザーでは
・混合ワクチンの種類と必要性
・高齢犬のワクチン接種とリスク
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