・唾液腺嚢胞の診断と治療
・唾液腺嚢胞の手術費用
「唾液腺嚢胞」とは
唾液を分泌する唾液腺や、その唾液を口腔内に運ぶパイプ役をする導管が損傷することで唾液が周囲の皮下組織に漏れ出した病態を言います。
損傷した唾液腺近くに漏れた唾液が溜まるので、ぶよぶよした膨らみができるのが特徴です。通常痛みはありませんが、過度にたまると支障がでてきます。治療としては唾液腺の摘出手術が推奨されています。
犬唾液腺嚢胞の種類と症状
唾液腺には大唾液腺と小唾液腺が存在します。唾液腺嚢胞を発症するのは大唾液腺(それぞれ一対存在する)の損傷が関与しています。
【 大唾液腺 】
・頬骨腺(きょうこつせん)
・下顎腺
・舌下腺
その他小唾液腺が軟口蓋・舌・頬などに存在し唾液を分泌しています。
唾液腺嚢胞では原因となっている唾液腺によって次のように分類されています。
種類 | 嚢胞のできる場所 | 重度になると出る症状 |
頸部唾液腺嚢胞 | 下顎のあたり | 多くは腫張のみ |
舌下部唾液腺嚢胞 (ガマ腫) |
口の中・舌の裏側 | 嚥下困難 涎 異常な舌の動き 発声異常 食事時に傷つくと出血 |
咽頭部唾液腺嚢胞 | のど | 呼吸困難 嚥下困難 |
頬部唾液腺嚢胞 | 目の周囲 | 嚢腫が眼球を圧迫すると眼球の突出 外斜視 |
耳下腺部唾液腺嚢胞 | 頬の下側・エラにあたる部分 | |
複合唾液腺嚢胞 | 複数の唾液腺が関与している | |
※ガマ腫:舌の下にできた嚢胞があたかもガマガエルが喉を膨らませた様に似ていることからその名がつけられた。犬に多いのは頸部唾液腺、舌下部唾液腺に起因する嚢胞。 |
唾液腺嚢胞の症状を簡単にまとめると
・損傷した唾液腺の周囲にぶよぶよとした膨らみが見られる 通常痛みを伴わない
・犬に多いのは頸部唾液腺嚢胞、舌下部唾液腺嚢胞
・口の中に嚢胞ができれば摂食障害、嚥下障害がおきる
・咽頭部に嚢胞ができれば呼吸困難を生じる場合がある
唾液腺嚢胞の原因
原因については不明な点も多く、気が付いたらぶよぶよとする膨らみができていた、というケースが多く見られます。
はっきりしている原因としては外傷が挙げられます。ケンカやじゃれあいによる咬みつき、異物、唾石(犬では少ない)による唾液腺や導管が傷つくことで発症します。また首輪による締め付けも要注意です。
その他、感染症や口腔内の炎症、遺伝的要素(トイプードル・ミニチュアダックスフント・ジャーマンシェパードなど)が発症原因と言われているが確証はありません。
唾液腺嚢胞の診断と治療・治療費
唾液腺嚢胞は体の機能に影響を及ぼす場合や炎症のある場合を除いては、膨らみ以外の症状がないのが一般的です。
慌てて病院に行く必要はありませんが、だんだん大きくなってくるようであれば対処が必要になってきます。人の握り拳くらいの大きさになることもあります。
また他の疾患との識別も必要なので早めに診断を受ける必要があります。
診断
診断をする上で状況に応じて次のような検査が行われます。
診断するための基本的な検査
・触診 膨らんでいる場所を触ると波動性がある。硬い場合は他の原因。
・穿刺吸引 患部に針を刺して内容物を吸引して検査(他の疾患との識別)
穿刺吸引を行い、透明~灰白色または血液の混じっている粘っこい液体(唾液)が吸引されれば唾液腺嚢胞です。甲状腺がん、口腔腫瘍、リンパ腫、リンパ節炎などとの識別診断のために必要な検査です。
その他必要に応じて次のような検査が行われる場合があります。
・レントゲン 唾液腺嚢胞の原因(異物や唾石の有無など)を調べる
・MRI どの唾液腺が損傷や閉塞を起こしているか不明な場合
・CT 咽頭部唾液腺嚢胞や頬部唾液腺嚢胞ではCTで病変部位を確認
唾液腺嚢胞の治療
唾液腺嚢胞の治療には3つの選択肢があります。
・ 投薬などで内科的治療
・ 穿刺吸引して内容物を抜く
【外科治療】
デメリット : 全身麻酔のリスクがある 損傷の状態によっては再発の可能性もある
【投薬治療】
【穿刺吸引】(溜まった唾液を注射器を使用して抜き取る)
デメリット : 8割以上は再発
穿刺吸引を繰り返していると唾液腺や導管をさらに傷つけ、手術が必要になった時にきれいに切除できないこともあります。また穿刺部位から細菌が入り化膿する危険性もあるので注意が必要です。
老犬で麻酔のリスクが高い場合、心臓病などの基礎疾患があり麻酔が危険な場合など内科的治療が選択されます。嚢胞に唾液がたまるスピードも個体差があり、一度穿刺するとしばらく溜まらない場合もあれば、1週間でかなりの量が溜まることもあります。溜まってきた唾液を口腔内に流すようにマッサージが効果的なケースもあります。
唾液腺嚢胞の手術費用は?
手術費用は嚢胞のできている場所や状態、術後の回復具合、手術を行う動物病院等によって大きく異なるので一つの参考例として見てください。
基本的な手術においては(診断に至るまでの費用も含む)ざっくりとした治療費は以下の通りです。
・穿刺検査 1,000~3000円
・全身麻酔 15,000円(体重、麻酔の種類によって異なる)
・唾液腺摘出術 30,000~40,000円
・入院費用 一泊 2,000~3,000円程度
・その他 術後の点滴 注射 処置 内服薬 等
※犬の唾液腺切除術の費用は日本獣医師会が行った家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査結果(令和3年度)によると3~40,000円が最も多い診療価格帯(17.7%)となっており、中央値は33,948円です。
上記を参考に推測すると唾液腺摘出の費用はおおよそ8~10万円程度が必要になります。
CTやMRIなどの画像診断を行う場合、その費用は「CT 40,000円」・「MRI 70,000円」程度が追加になります。
頬部唾液腺は頬骨弓という骨の裏側にあるため、この骨を除去してから摘出することになり、手術費用ももう少し高額になるでしょう。
よくある質問
唾液腺嚢胞は自然治癒することはありますか?
唾液腺を切除してしまっても大丈夫なのでしょうか?
ペット保険は必要?
ペットには公的な保険制度がありません。そのため治療費の自己負担額は100%です。
もしもの時に、お金を気にせずペットの治療に専念できるよう健康なうちにペット保険に加入することをおすすめします。
また、病気になった後では加入を断られる可能性があります。
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【犬の唾液腺嚢胞の手術費用はどれくらいかかる?症状や治療法も解説!】まとめ
今回、ペット保険比較アドバイザーでは
・唾液腺嚢胞の診断と治療
・唾液腺嚢胞の手術費用