・犬のアジソン病治療薬と費用
・犬のアジソン病治療で飼い主さんに注意してほしいこと
犬のアジソン病(副腎機能低下症)とは
生き物は体の状態を一定に保つためにホルモンの量を巧みにコントロールしています。効果が発揮されるとホルモンの分泌は抑制され、過剰にならないように調整します。
アジソン病は、副腎皮質から分泌される副腎皮質ホルモン(ステロイド)が分泌されなくなる病気です。
【副腎の位置と構造】
位置:左右の腎臓の側にある重さ1g程度の小さな器官
構造:副腎皮質と髄質からなる
副腎は髄質を囲むようにして皮質が覆っており、副腎皮質は外側から「球状層」「束状層」「網状層」の3層で構成されており、各層から異なるホルモンが分泌されます。
【副腎皮質の働き】は副腎皮質ホルモンの分泌
【主な副腎皮質ホルモンの主な種類】
① 糖質コルチコイド(グルココルチコイド)
② 鉱質コルチコイド(ミネラルコルチコイド) 球状層から分泌される
① 糖質コルチコイドは束状層から分泌され肝臓での糖新生・筋肉組織でのタンパク質代謝・脂肪の分解・血圧の維持・抗炎症・免疫抑制・ストレスに対処するなどの働きをします。
② 鉱質コルチコイドは球状層から分泌され、体内の電解質や水分量の調整などに関与します。
また、副腎髄質からはアドレナリン・ノルアドレナリンが分泌されます。
アジソン病には次の2タイプがあります。
定型型アジソン病(約70%を占める) 糖質コルチコイド・鉱質コルチコイドの両方が不足
非定型型アジソン病(約30%程度) 糖質コルチコイドのみが不足
【アジソン病の症状】・・・アジソン病特有の症状がなく他の病気でも見られるような症状が出現します。
・食欲不振
・嘔吐
・衰弱
・下痢
・体重減少
・虚脱
・振戦
・痙攣
など
【検査・診断】
・血液検査 血糖値や電解質等の測定
・ACTH刺激試験 副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を投与する前後の犬の血中コルチゾール濃度を測定し、投与後の血中濃度が基準値未満であればアジソン病と診断
・腹部超音波検査(エコー検査) 副腎の委縮が確認できれば診断の手助けとなる
糖質コルチコイドが不足していると低血糖を起こし意識を失う危険性があります。また電解質バランスが崩れ(ナトリウム値が低く、カリウムが高い)ます。
犬のアジソン病の特徴
アジソン病の症状は非特定であり、これといったアジソン病特有の症状はありません。「元気がない」「食欲がない」「嘔吐や下痢」「眠ってばかりいる」といったありふれた症状が出現することが多く、好調と不調を繰り返しながら、ゆっくりと進行していきます。
また「ストレスに弱い」のもこの病気の特徴です。普段は元気なのに、ペットホテルに預けると必ず下痢をする、動物病院に行った後は元気がない、来客があると調子が悪くなる等々。ストレスが加わるとコルチゾールの要求量が増えるのですが、絶対量が不足するため症状が表面化しやすくなります。
そして、副腎皮質の90%以上が破壊されると平常時でもホルモン不足による症状がみられるようになります。
オスよりもメスに多く(70%程度)、4~6歳で見つかるケースが多いとされています。
アジソンクリーゼ(副腎クリーゼ・急性副腎機能不全)とは
アジソン病は副腎機能がかなり失われるまで大きな症状が出ないですが、機能低下をしているところに強いストレスが加わることでアジソンクリーゼと呼ばれるショック状態をおこします。これは、ステロイドホルモンの不足による循環不全です。
【症状】 突発的な脱力状態 呼吸困難 意識消失 痙攣 腎不全 など
【治療】 輸液にをより電解質を補正し、循環血液量を増やす グルココルチコイドの投与 など
ストレスにも様々な種類がありますが、大きなものでいえば事故・ケガ・手術・感染症・抜歯などがあげられます。また旅行や来客、トリミング等がストレスになる可能性もあります。日常生活の中でストレスが予測できる場合はプレドニゾロンなどを服用してストレスに対応します。
アジソン病の3割程度はアジソンクリーゼを起こし病院に駆け込み、そこで初めて診断されます。
アジソンクリーゼは適切な治療を行えば多くは回復しますが、対処しないと命を落とします。副腎皮質ホルモンの絶対量が足りていない、末期症状です。
アジソン病にかかりやすい犬種
・ スタンダードプードル
・ コリー
・ グレート・デーン
・ ロットワイラー
・ ウェスト・ハイランド
・ ホワイト・テリアなど
これらの中には日本での飼育頭数が少ない大型犬も含まれ、海外の報告として挙げられています。
日本ではミニチュア・プードル、ウエルッシュコーギーなどが比較的多いようです。
犬のアジソン病の原因
アジソン病の原因については解明はされていない部分もありますが、原因の多くは自己免疫が副腎組織を攻撃して委縮・破壊することでおこる「原発性」と呼ばれるものです。
副腎皮質ホルモンの分泌は、脳下垂体からの指令(副腎皮質刺激ホルモンの分泌)により分泌されるため、脳下垂体・副腎のいずれかに障害があると分泌されません。
①副腎そのものの障害(原発性)
脳下垂体から副腎皮質刺激ホルモンは正常に分泌されているが、副腎が機能しないものを言います。9割がこのこのパターンです。
②脳の下垂体の障害(二次性)
体内のステロイドホルモンが少なくなっているにも関わらす、脳下垂体から副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が分泌されないケースです。この場合も副腎皮質からホルモンは分泌されません。脳下垂体が機能しない原因としては脳下垂体もしくはその周辺の腫瘍・梗塞・感染 外傷などが挙げられます。
犬のアジソン病の治療薬
アジソン病は診断・薬の量を見極めるのは難しいですが、それをクリアすれば治療は簡単です。要するに不足している副腎皮質ホルモンを補充すればよいのです。原発性のアジソン病では副腎機能が回復することは望めないので、生涯にわたり治療が必要になります。
慢性アジソン病の具体的な治療法は「不足している鉱質コルチコイド、糖質コルチコイドの補充療法」になります。
定期的にホルモンの量や電解質などをモニタリングしながら、薬の量を調整していきます。状態が落ち着いていれば検査は年に2~4回程度です。
治療に使用される主な薬は以下の通りです。
フロリネフ(フルドロコルチゾン酢酸エステル~鉱質コルチコイド配合剤)
多くのアジソン病で第一選択肢として使用されている薬です。
・日本でも製造販売されている
フロリネフは鉱質コルチコイド製剤ですが、糖質コルチコイドの活性作用もあるため、半数の症例においては単独投与で効果が期待できます。
海外の製品では「フルドロコルチゾン」や「コルティネフ」などがこれにあたります。
パーコーテンV(ピバル酸デゾキシコルチゾン・DOCP注射液~鉱質コルチコイド製剤)
・一度の注射で25日程度の効果持続
・糖質コルチコイドの作用はないため、プレドニゾロンの経口投与を併用
・海外の製品 日本では製造販売されていない
血液検査で電解質等をチェックしながら注射の間隔を調整することが可能となります。
プレドニゾロン 糖質コルチコイド製剤
・DOCPの注射に併用して使用
・ストレスが危惧される場合に予防的に使用
・日本で製造販売されており薬代も安価
アジソン病治療薬の薬代について
アジソン病治療薬の薬代は飼い主さんの大きな負担になります。毎日の服薬、もしくは月に1回の注射が必要になり、生涯にわたり継続しなくてはなりません。定期的な検査も必要なため検査費用もかかります。
例えばフロリネフを例にとると
2.5~5.0㎏の犬の場合では1錠(0.1㎎)が一日量の基本になります。検査結果を見ながらもう少し多く必要な場合もあります。
フロリネフは動物病院で処方してもらうと1錠あたり300~500円で、1カ月の薬代は2~3万円というケースが多いようです。ちなみにフロリネフは人用にも使用されている薬で、0.1㎎の薬価は253.8円です。かなり高額ですが、フロリネフは日本の製薬会社でも製造販売している唯一の薬です。
DOCPの注射の場合は、10キロの犬であれば1回の注射で15,000円程度になります。
一方海外の製品でフロリネフと同様の成分の治療薬を見ると、1錠70円位あたりから入手できるため、飼い主さんの中には個人輸入代行業者を通じて購入する人もいます。動物病院によっては飼い主さんの負担を少しでも減らせるように、希望があれば海外製のフロリネフを処方している病院もあります。
ただし、信頼できる製薬会社の製品を信頼できる個人輸入代行業者を通して入手しています(一般の人の個人輸入と獣医師の個人輸入はシステムが異なります)。
※ 治療費は各動物病院によって異なります。また、全ての動物病院が海外の製品を保持しているわけではありません。
もし、薬代が高額で苦慮されているのであれば、正直に獣医師さんに相談してみましょう。ただし、薬の入手経路はどうあれ、定期的な検査は必ず受けましょう。
ペット保険においてはアジソン病を補償対象にしている保険会社は多いですが、日本で承認されていない薬は補償の対象外になります。
ステロイド治療を行って、それでもダメな場合は?
アジソン病は副腎皮質ホルモンが不足することにより生じる病気です。適切な治療をすれば症状が良くなるはずです。
治療をしても効果がないならば、他の病気が隠れているのかもしれません。すこし角度を変えてみるためにも、セカンドオピニオンを求めるのも選択肢の一つでしょう。
犬のアジソン病の予防法
アジソン病は、ほとんどが自己免疫性の疾患です。特に有効な予防法はありません。
できることは、飼い主さんが日ごろから愛犬の状態を注意深く観察して、異変に早く気づいてあげることでしょう。
アジソン病は予防が難しい病気ですが、犬の健康管理を徹底することで早期発見が可能です。犬の体調や行動の変化に気を付け、定期的な健康診断を受けることが大切です。
アジソン病の犬の飼い主さんに注意してほしいこと
アジソン病は適切な治療を正しく続けていけば予後は良いとされています。寿命を全うできるケースも多く見られます。
飼い主さんに絶対に守ってほしいことは以下の通りです。
・自己判断で薬の量の増減や休薬をしない
・治療薬を個人輸入して勝手に使用しない(必ず獣医師に相談)
・ストレスに注意
ほとんどの場合、短期の休薬で急激な症状の変化はおこりません。ワンちゃんが元気だし、調子が悪くなったら飲ませればよいと安易に考えていると、ある日突然アジソンクリーゼを起こし、命の危険にさらされることもあります。自己判断で休薬や薬の量を調整することは大変危険です。
また、症状が安定している、元気だから、と個人輸入代行サイトで薬を購入して動物病院で検査を受けないまま投与を続けることも危険な行為です。
よくある質問
アジソン病の余命はどれくらいですか?
アジソン病治療薬の副作用を教えてください。
ペット保険は必要?
ペットには公的な保険制度がありません。そのため治療費の自己負担額は100%です。
もしもの時に、お金を気にせずペットの治療に専念できるよう健康なうちにペット保険に加入することをおすすめします。
また、病気になった後では加入を断られる可能性があります。
ペット保険比較表や記事を活用するのがおすすめ!
ペット保険比較アドバイザーでは、ペットに合った保険の選び方やペットの健康に関するお役立ち記事を公開しております。
記事と合わせて比較表も活用することで、ペットと飼い主様に合った保険を選ぶことができます。
また、保険会社のデメリット等も理解できるので、後悔しないペット保険選びができます。
ペット保険への加入を検討されている方はぜひご活用ください。
【犬のアジソン病:薬代はどれくらいかかる?治療法や余命は?】まとめ
今回、ペット保険比較アドバイザーでは
・犬のアジソン病治療薬と費用
・犬がアジソン病治療で飼い主さんに注意してほしいこと