【犬の胆泥症】~手術が必要なケースとは?手術費用はいくらかかる?

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胆嚢摘出の手術は20~30万円程度が必要です。胆嚢の病気は初期症状が目立たなく、早期発見が困難です。シニア犬は特に定期的な健康診断を受けて状態を把握しておきましょう。
健康診断で「胆泥が溜まっている」と指摘を受けた経験はありませんか?
胆泥??
「心配ありません」と言われても、どんなものなのか、どうすればよいのか心配ですよね。

この記事では

・犬の胆泥症と胆嚢の働き
・犬の胆嚢疾患と治療法
・胆嚢摘出をする病態と手術費用
について解説します。
最後までお読みいただければ、「犬の胆泥症とはどんな病気か」「胆泥ができる原因や治療法」がわかるようになっていますので、ぜひ最後までお読みください。


目次

「胆泥症」とは

胆汁は脂肪の消化吸収に大切な役割を果たす消化酵素です。肝臓で作られた胆汁は胆嚢に蓄えられ濃縮されます。

胆汁は本来は液状ですが、何らかの原因で泥状、もしくは砂状に変化した状態を胆泥症と言います。量が少なく、症状もない場合は経過観察をしますが機能に支障が出る場合は手術が必要です。

胆嚢の役割は胆汁を排出するポンプ

 

胆嚢とは

肝臓で作られた胆汁を入れておく袋状の臓器

胆汁とは

脂肪の消化吸収に欠かせない消化酵素

胆汁の成分は 

・胆汁酸    不要になったコレステロールなどが肝臓で代謝されて再利用される
・ビリルビン  古くなった赤血球を処理した後のゴミで胆汁内に排泄される

どこで作られる

・肝臓で作られ、常に分泌されている
・肝臓から肝管を通って胆嚢に入る

胆嚢の働きは

胆汁を濃縮し、胃に食べ物が入ると収縮して消化液である胆汁を十二指腸に送り出すポンプの役割をする

犬の体の中で胆のうの位置と大きさは東京ウエスト動物病院の図を参照してください。

 

胆嚢肝臓に挟まれるように存在する小さな袋状の臓器で、一部が肝臓にくっついており、消化器に分類されます。

もし、胆嚢に何らかのトラブルが生じて手術をする必要が出てきた場合胆嚢全体を摘出します。

 

胆嚢がなくなった場合は代替器官が働く

もし、手術によって胆嚢を摘出した場合、どのような弊害がでるのでしょうか?

結論から言うと、日常生活にはほぼ支障はありません。

胆汁は肝臓で作られ、肝管を通じて迂回するような形で胆嚢に入り、蓄えられ、濃縮されます。胆嚢が収縮すると総胆管を通って十二指腸に分泌されますが、実は肝管と総胆管は直接つながっています。分かりやすい図があるのでメル動物病院のHPをご覧ください。

・胆汁は本来    肝管 ⇒ 胆嚢 ⇒ 総胆管 ⇒ 十二指腸

・胆嚢を摘出すると 肝管 ⇒ 総胆管 ⇒ 十二指腸

肝臓では常に胆汁が作られており、胆嚢を切除すると胆汁は肝管から直接総胆管へと入り、総胆管にある程度は溜まりますが、十二指腸に少しずつ流れ出します。胆嚢摘出後には総胆管の拡張がみられることが多いのはそのためです。

胆嚢が無いので胆汁を濃縮することはできませんが、脂肪の消化吸収において大きな問題はありません。ただし、ドカ食いや脂肪の多い食事をとると胆汁の分泌が間に合わす、下痢や腹痛をおこすことがあるので、その点には注意が必要です。

 

高齢犬に多い!犬の胆嚢の病気や原因・症状・検査法・治療法

犬に多い胆嚢疾患は「胆泥」「胆石」「胆嚢粘液嚢腫」「胆嚢炎」などが挙げられます。これらの疾患の関係性は明確になっていない部分もありまが互いに影響しあっていると考えられています。

胆泥 何らかの原因で胆汁が泥状に変化したもの
胆石 胆汁が変質して硬くなり石状になったもの
胆嚢粘液嚢腫 胆嚢内に過剰に分泌された粘液がたまり、それがゼリー状になった状態
胆嚢炎 細菌感染による炎症

 

高齢犬や肥満型犬がなりやすい!胆嚢の病気の原因

胆泥・胆石・胆嚢粘液嚢腫はいずれも胆汁が関係しています。

ここでは、もっともポピュラーな胆泥を例にとって説明します。

【胆泥症】

胆泥は犬によく見られる症状ですが、無症状の場合も多く、胆泥があること自体が寿命を左右することはありません。10歳以上の犬では40%に見られるという報告もあるようです。

無症状のことが多く、健康診断やほかの理由でエコー検査を行った時に偶然見つかることがあります。

症状もなく、血液検査でも異常がなければそのまま経過観察をします。

一方で、胆泥が他の病気の症状の一つとして出てくることがあります。

胆泥ができる原因となる疾患

・内分泌疾患(甲状腺機能低下症 副腎皮質亢進症など)
・胆嚢炎 胆汁の性状が変化して胆泥や胆石を起こしやすい
・膵炎
・糖尿病 など

※ 胆嚢炎は細菌感染(腸炎・膵炎・肝炎・胆管炎)に併発することが多い

その他の原因

・年齢 : 加齢による胆嚢壁の構造の変化 胆嚢の運動性の低下
・体質や遺伝的な脂質代謝異常
・生活環境 : 運動不足 肥満 高カロリーのフードやおやつ
※ ミニチュア・シュナウザー、シェットランドシープドッグ、アメリカンコッカースパニエルは遺伝的に脂質代謝異常を起こしやすい犬種として知られています。また最近ではチワワ、ポメラニアン、トイプードルなどにもよく見られます。
胆泥が溜まっていること自体は大きな問題にはなりません。多くの場合症状もないままに経過していきます。症状がない場合は胆泥を排出するなどの積極的治療は行わず、経過を見守っていくのが一般的です。
しかし、【胆泥の量が増えてくると・・・】

・胆泥が多いと胆汁の粘度の高い場合が多い ~ ドロドロになった胆泥は腸に排出しにくく、胆管を詰まらせやすい

胆管が詰まり胆汁が行き場所を失う胆嚢に過剰に溜まり、肝臓にも蓄積 ⇒ 血中に漏れ出すと血中のビリルビンが増えて黄疸(皮膚や目が黄色くなる)

・ビリルビン値が上がると体調不良

・胆汁が胆嚢に溜まりすぎると胆嚢破裂

上記のような経過をたどることがあります。

 

胆嚢の病気の症状

胆嚢は症状がでにくい部位の一つです。

【胆嚢疾患で見られる主な症状】

・消化器症状(嘔吐・・・黄色や緑の胆汁 下痢 など)
・元気消失 食欲不振
・黄疸(胆管が詰まった場合)
・発熱(胆嚢炎、胆嚢破裂による腹膜炎)
など

胆泥症や胆嚢粘液嚢腫胆嚢では、胆嚢の中の正常な胆汁が少なくなり、脂肪の消化吸収がうまくできず下痢をおこします。

胆嚢疾患で最も危険な状態の一つは胆嚢破裂です。胆嚢が破裂すると胆汁が腹腔内に流れ出し、強度の腹膜炎をひきおこし、敗血症やショックで命を落とす場合があります。

胆嚢破裂の症状

・元気消失(ぐったりしている)
・食欲不振
・嘔吐
・腹痛 など

破裂というと「風船が割れるような状態」をイメージしがちですが、小さな穴が開いてそこから胆汁が流れ出す場合もあります。早めの治療が命を救うことになります。時間が経過すれば炎症や癒着をおこし、手術も大きなリスクを伴います。

胆嚢炎、胆泥症、胆嚢粘液嚢腫、胆管閉塞などいずれも胆嚢破裂の危険性があります。

・胆嚢炎では炎症がひどくなると胆嚢に穴が開く
・胆泥症、胆嚢粘液嚢腫は内容物が多く溜まると破裂(胆嚢が拡張し、胆嚢壁がもろくなるため)
・胆管閉塞では、胆汁の出口がなくなるために胆汁が胆嚢の許容量を超えて溜まると上記同様の理由で破裂

 

胆嚢の病気の検査

胆嚢疾患で行われる主な検査

・超音波(エコー)   胆嚢や胆管の性状を確認
・血液検査       炎症 肝臓の負担 胆管の閉塞 等の確認

胆嚢疾患で参考になる主な血液検査

GOT GPT などの肝酵素 ⇒ 肝臓に異変がないか
ALP ⇒ 胆汁の流れがうっ滞すると高値
ビリルビン ⇒ 胆管閉塞になると上昇
白血球数・CRP ⇒ 炎症の有無
など

 

胆嚢摘出手術は難易度が高い!胆嚢の病気の治療法

胆嚢の病気が、他の疾患に併発している場合は元の疾患を治療することが前提になります。

胆嚢は肝臓に挟まれるように存在し、一部が肝臓にくっついています。肝臓は血管に富んでおり、肝臓から胆嚢をはがすのは高度な技術を要します。

胆嚢摘出を決断するのは

・胆泥の量が増え、内科的治療でも改善しない
・胆嚢粘液嚢腫の所見がある
・胆嚢が肥大している
・胆嚢壁が薄い
・胆汁の流動性が低下している(粘っこい)

「このような状態になっている」「なる危険性がある」場合は胆嚢摘出が推奨されます。

胆嚢破裂と胆管の完全閉塞は特に危険な状態であり、なってしまってからの手術は難易度が上がり、リスクを伴います。

手術のガイドラインは定められておらず、判断は各獣医師に任せられていますが、危険性のある場合早めに手術するケースが多いようです。獣医師さんと相談しながら判断しましょう。

 

内科治療

胆嚢粘液嚢腫は内科的治療法で治ることはないので外科的治療になります。

胆泥症の内科的治療としては薬と食事療法が中心になります。

・利胆剤(ウルソ) 胆汁の排泄を促す
・総胆管の括約筋をゆるめる(スパカール)
・低脂肪食に切り替える
・良質なタンパク質

※良質なタンパク質を摂ることは必要ですが、肝臓への負担を考えるとあまりにも高タンパク質のペットフードは控えるべきでしょう。ドライフードならタンパク質が25%程度のもの、もし肝機能に異常があればもう少し控えたものを選びましょう。

手作りでごはんを作っている人には、キャベツやブロッコリーなどの野菜もおすすめです。加熱すれば消化も良く手低カロリー、犬の好む野菜なので、食事に混ぜたり、おやつとしても利用できます。

また、生活上で配慮することとして

・肥満にさせない
・胆汁の生成に必要なコレステロールの摂取を抑える(胆泥症用の療法食もある)
・食事の回数を増やし、夜間・昼間の空腹な時間を減らす(胃に食べ物を入れることで胆汁の排泄を促す)

 

胆嚢摘出手術の注意点やリスク

手術をする場合、当然全身麻酔のリスクがあり、内臓機能の低下や肝機能の低下、血圧低下、心不全、呼吸困難などが考えられます。全身麻酔をかける場合、術前検査で麻酔に耐えられるかどうかを判断します。ちなみに、全身麻酔が原因で死亡する確率は 0.17~0.65%です。

高齢になると全身麻酔が危険と言われていますが、年齢にかかわらず検査結果で支障がなければ問題ありません。

犬の胆嚢摘出術は、すでに何らかの症状が出ている場合、周術期(手術前、術中、術後)の死亡率は約20%、胆汁が腹腔内に漏れ出している場合や重度の腹膜炎を併発している場合は手術がうまくいっても40~60%は助からないと言われています。

胆嚢摘出術は高度な技術が必要になり、手術できる獣医師や動物病院も限られています。困難さの一つに、胆嚢を肝臓からはがさなくてはなりません。肝臓は血管に富んでおり、止血を行いながら細かい作業が求められます。また胆嚢の状態が悪い場合は術中に胆嚢が破れる危険性もあります。

次のような点に特に注意しながら手術が行われます。

・肝臓からの出血
・腹膜炎(胆嚢の内容物が漏れる)
・術後の胆管閉塞(胆嚢の内容物が胆管に移動)

術後は鎮痛剤や抗生物質などの点滴をしながら経過を注意深く観察し、2日間は血液検査の数値を見る必要があります。

 

胆嚢摘出手術の入院期間

胆嚢摘出術を受けた後の入院期間は経過が順調であれば3日目には退院できます。

また胆嚢破裂している場合でも1週間くらいで退院できるでしょう。

3泊4日の入院が標準です。

 

胆嚢摘出の手術費用

胆嚢摘出術の費用を公開している動物病院の例をご紹介します。

ガレン動物病院 3泊4日  250,000円
銀座ペットクリニック   261,800円

治療費は犬の状態によっても大きく異なりますが、20~30万円程度が相場です。

 

よくある質問

胆泥症の治療はペット保険で補償されますか?

加入後に発症した場合は補償の対象になります。ただし、既往があればペット保険加入時に胆石や胆泥症を含む肝・胆嚢の疾患は告知が義務付けられている場合が多く、状態によっては不担保(当該疾患は補償されない)となる場合もあります。

胆泥症におすすめフードはどのようなものですか?

簡単に言うと「低脂肪」「消化が良い」「カロリーが低い」ことに配慮したドッグフードがおすすめです。ペットフード会社から胆泥症の療法食も販売されています。

ペット保険は必要?

ペットには公的な保険制度がありません。そのため治療費の自己負担額は100%です。

もしもの時に、お金を気にせずペットの治療に専念できるよう健康なうちにペット保険に加入することをおすすめします。

また、病気になった後では加入を断られる可能性があります。

ペット保険比較表や記事を活用するのがおすすめ!

ペット保険比較アドバイザーでは、ペットに合った保険の選び方やペットの健康に関するお役立ち記事を公開しております。

記事と合わせて比較表も活用することで、ペットと飼い主様に合った保険を選ぶことができます。

また、保険会社のデメリット等も理解できるので、後悔しないペット保険選びができます。

ペット保険への加入を検討されている方はぜひご活用ください。

【高齢の犬に多い胆泥症~手術が必要なケースとは?手術費用はいくら?】まとめ

今回、ペット保険比較アドバイザーでは

・犬の胆泥症と胆嚢の働き
・犬の胆嚢疾患と治療法
・胆嚢摘出をする病態と手術費用
について解説してきました。
胆嚢の病気は初期では顕著な症状が出ないのが特徴です。定期的な健康診断を受けて状態を把握し、悪化を予防することが大切ですね。
ペット保険比較アドバイザーではペット保険に関する記事も掲載しておりますので、ぜひご活用ください。

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