多発性嚢胞腎の猫は長生きできない?余命を延ばす治療法とは?
多発性嚢胞腎は猫だけでなく人もかかることがあり、難病指定されている疾患です。
腎臓機能が徐々に低下していき、放置すると死亡する恐ろしい病気です。
この記事では
・猫の多発性嚢胞腎の症状
・猫の多発性嚢胞腎の原因
・猫の多発性嚢胞腎の予防方法
多発性嚢胞腎とは
猫の多発性嚢胞腎(pkd)は
です。
・多嚢胞腎
とも呼ばれます。
徐々に嚢胞の量が増えていき腎臓と置き換わります。その結果、正常な腎機能が失われてしまうのです。
腎機能が徐々に低下していく
腎臓は主に
働きをします。
尿として毒素が排出されないと体内に毒素が溜まることで尿毒症となり最悪死に至るため、腎臓は重要な役割であることがわかります。
多発性嚢胞腎では嚢胞が増える数と並行して腎臓の機能を低下させていきます。
猫は腎臓が悪くなりやすい
猫は腎臓の疾患にかかりやすいことで知られています。
15歳以上の高齢猫の81%が慢性の腎臓病を患っているといわれています。
です。
ただし慢性腎不全には原因がわからないケースもあります。くわえて慢性腎不全は初期症状があまり見られない疾患です。
症状が現れた時には腎臓の機能が3分の2失われていることがほとんどです。
そのため些細な変化でも注意しておく必要があります。
多発性嚢胞腎の原因は?
多発性嚢胞腎の原因は遺伝性です。特定の猫種で多発していることが明らかにされています。
かかりやすい猫種は
・アメリカンショートヘア
・スコティッシュフォールド
・エキゾチック・ショートヘア
・ヒマラヤン
・ブリティッシュ・ショートヘア
があげられます。
実にペルシャの4割近い猫が多発性嚢胞腎にかかっているといわれています。
遺伝性の病気
多発性嚢胞腎はどちらかの親猫がその異常遺伝子を持っている場合、50%という高い確率で遺伝します。
遺伝しやすい疾患なうえ
「ヒマラヤン」 ペルシャネコとシャムの交配種
などのように、かかりやすいといわれているペルシャネコは交配として使われた歴史がある猫種です。
このことで多発性嚢胞腎が疾患として遺伝された経緯がわかります。
くわえて猫種の中ではペルシャとの交配を認められているものもあり、スコティッシュフォールドもその中の一種です。
多発性嚢胞腎を含めた腎疾患は症状がわかりにくいです。
そのため遺伝子検査をしていない場合だと、どちらかの親が疾患の遺伝子を持っている可能性は十分にあり得ます。
そのため多発性嚢胞腎は交配によって広められた遺伝子疾患だといえます。
腎嚢胞(じんのうほう)との違いに注意!
腎臓に嚢胞を認められる疾患には
・腎嚢胞(じんのうほう)
があります。
・「嚢胞腎」 通常「多発性嚢胞腎」を指し、大小様々の大きさの嚢胞が両側の腎臓に多発する先天性疾患
嚢胞が数個程度しかない腎嚢胞ですが、複数個発生することがあります。
そうなると所見ではどちらか見分けがつきません。ただしそれぞれにある違いから診断されます。
【「多発性嚢胞腎」と「多発性腎嚢胞」違い】
病名 | 症状 |
多発性嚢胞腎 | 徐々に腎機能が低下し肥大がみられる |
多発性腎嚢胞 | 腎機能はあまり悪化せず肥大も見られない |
腎嚢胞は子猫で見つかることがあり、嚢胞腎は成猫で見つかることがある病気です。
腎嚢胞では肝臓に嚢胞ができる「肝嚢胞」がみられるケースがありますが、嚢胞腎だと稀に見られるものの多くはありません。
多発性嚢胞腎の症状は?
多発性嚢胞腎は徐々に腎機能を低下させ、最終的には腎不全となります。
そのため多発性嚢胞腎は腎不全と同じ症状がみられます。
・尿の量が増える
・嘔吐や食欲不振
・体重減少
多発性嚢胞腎の診断方法
一般に慢性腎臓病は症状の進行に合わせて徐々に腎臓が萎縮する傾向があるのに対し、多発性嚢胞腎は腎臓のサイズが拡大します。
ただし腎臓が肥大する疾患はほかにもあるため、多発性嚢胞腎の診断を下すためには4種類の検査を用います。
2,レントゲン検査
3,エコー(超音波)検査
4,遺伝子検査
検査①:触診
まずは触診で腎臓の大きさを確認します。
猫の皮膚は薄く伸縮性があるため触診でも腎臓の形がわかりやすく、ある程度の肥大具合がわかります。
多発性嚢胞腎では触診によって猫が痛みを訴えることはありません。ただし腎臓への細菌感染が合併しているような場合は痛がる様子が見られます。
腎臓が肥大する疾患としてはほかにも腎臓腫瘍や水腎症などがあるため、さらに詳しい検査で原因を判断します。
検査②:レントゲン検査
レントゲン検査では腎臓の肥大にくわえて嚢胞による形の崩れがわかります。
このレントゲン検査は初期だと腎臓の形はたいてい平滑なので正常なものと区別がつかず、診断の手助けにならないことがあります。
検査③:エコー(超音波)検査
エコー検査は多発性嚢胞腎があれば瞬時に発見することができる検査方法です。
腎臓の内部に液体がたまった袋状の構造物を確認することができます。
嚢胞はほぼ左右ともに見られますが、多くは大きさや数に左右差が見られます。
エコー検査は早期発見にも有効です。症状がなくても
ようになります。
またそれより早期に行っても嚢胞が見つかることが多くあります。
検査④:遺伝子検査
多発性嚢胞腎は遺伝子疾患のため、遺伝子検査も可能です。
遺伝子検査では
ことができます。
頬粘膜もしくは血液を用いて遺伝子診断を受けることができますが、離乳前の子猫では血液検査となります。
これは母猫の遺伝子がミルクに混じっているためです。
エコー検査で嚢胞が見つかった場合、原因が多発性嚢胞腎によるものなのかどうかをこの遺伝子検査で確定診断することができます。
多発性嚢胞腎の治療法は?治療費はいくら?
多発性嚢胞腎が完治する治療方法は現在のところ見つかっていません。
腎臓は一度機能を失うと治る見込みがなく外科的な手術もできないため、
・輸液療法(静脈点滴や皮下補液など)
・腎臓への血流を促すための血管拡張薬
・高血圧が生じている場合は血圧を下げる薬
など、症状が似ている慢性腎臓病と同様の治療法となります。
猫の症状によって使用する薬や量の調節が必要なため、定期的な通院と治療を行うことが大切です。
治療費はどれくらい?
【治療費の目安】
項目 | 費用 |
診察料 | 1,000円 |
検査費用(血液や尿検査、画像診断など) | 5,000円程度 |
処置費用(注射や点滴など) | 数千円~10,000円程度 |
療法食 | 4,000円程度 |
多発性嚢胞腎には手術はなく、症状に合わせて処置を行います。
そのため定期的に血液や尿検査、画像診断などで腎臓の様子を確認する必要があります。
動物病院によってことなりますが血液検査は数千円から、画像診断は5,000円程度が目安と考えられます。
また進行に伴って使用する薬や注射、点滴の量が増加する傾向があります。
場合によっては10,000円を超えるケースもあるでしょう。
アニコム損保「みんなのどうぶつ病気大百科」によると、1回あたりの通院で平均約5,000円となっています。
多発性嚢胞腎の予防方法はある?
多発性嚢胞腎には残念ながら予防する方法がありません。対応する猫種には発症リスクに備えるといった形になります。
発症を防ぐことはできないものの
で早期発見が可能です。早くから治療を行うことで余命を延ばすことができます。
またエコー検査で嚢胞が確認された場合、遺伝子検査を行うことで確実な診断ができます。
予防はできなくてもきちんと治療を行い、多発性嚢胞腎を発症後でもできるだけ生活の質を崩さないように心がけましょう。
猫におすすめの保険は?
ここでは猫に合ったおすすめのペット保険、比較・選び方について解説します。
全てのペット保険で補償の対象外である去勢の費用等の項目は除き、あくまで保険会社・プランで差別化になるポイントに絞って解説します。
他サイトのようなランキング形式ではなく、あくまで猫目線で解説していきます。
猫のペット保険加入の選び方のポイント
・歯科治療(歯周病等)
③通院・手術・入院を補償するフルカバー型のペット保険の中でも通院は他社と比較しても手厚いか
④更新の際に「来年度からの傷病や部位補償の対象外」とする可能性がないか
①猫のなりやすい病気が補償されるか確認
ペット保険は保険会社によって補償する病気や、補償の対象外となる項目が異なります。
中には猫がなりやすい、歯周病を含む一切の歯科治療を補償の対象外としているペット保険も存在します。例えば「プリズムコール」では一切の歯科治療が補償の対象外です。
また、「日本ペット少額短期保険:いぬとねこの保険」では「歯肉に触れる治療は補償されるが、歯に触れる治療は補償の対象外」といった細かい制限があります。
特に歯科治療は保険会社によって補償されるかが異なりますので、必ず保険約款や重要事項説明書を確認することをおすすめします。
また公式HPでも「保険金のお支払いできない事例」の中に記載されていることがほとんどですので必ず確認しましょう。
補足になりますが、予防目的の歯石除去等は全てのペット保険で補償の対象外なので注意しましょう。
猫がなりやすい病気で補償の対象外か確認すべき病気
②加入後に発症した先天性、遺伝性疾患が補償されるか
全てのペット保険で加入前に発症している先天性、遺伝性疾患は基本的には補償の対象外となってしまいますが、加入後に発症した先天性、遺伝性疾患を補償するかどうかは保険会社によって異なります。
猫種によっては、なりやすい遺伝性疾患があります。例えばスコティッシュフォールドでは 骨軟骨異形成症という遺伝性疾患が存在します。
こちらも併せて公式HP内の「保険金をお支払いできない事例」や保険約款・重要事項説明書を確認し、加入後に発症した先天性疾患が補償されるかしっかり確認しましょう。
③通院・手術・入院を補償するフルカバー型のペット保険の中でも通院補償の手厚さを重視するのがおすすめ
猫がなりやすい病気である「腎臓病」や「膀胱炎」は長期もしくは複数回の治療が必要になる疾患です。また「尿結石」は症状が重い場合、外科手術を伴う高額治療が必要になる傷病です。
そのため、猫には「通院・手術・入院を補償するフルカバー型のペット保険」に加入することがおすすめです。
しかし、猫は腎臓病等の慢性疾患になりやすいのに対し、そこまで手術の可能性は高くありません。そのため猫にはフルカバー型の中でも通院補償が他社より手厚いペット保険に加入することをおすすめします。
【通院治療費】
・年間平均診療費 : 272,598円
・平均診療単価 : 9,329円
・年間平均通院回数 : 15.2回
参考:アニコム損保「家庭どうぶつ白書2019」
参考:猫との暮らしとお金「猫が慢性腎臓病になったときにかかる費用はどれくらい?」
(あくまでも統計による平均なので一つの参考資料として見てください)
④更新の際に「来年度からの傷病や部位補償の対象外」とする可能性がないか
ほとんどのペット保険が一年契約となっており、契約を毎年更新していくことで終身の補償となっています。
つまり、ペット保険に加入すると毎年契約更新の審査があります。
中には「前年度にかかった傷病や慢性疾患」等の、特に治る見込みが少ない、再発の可能性が高い慢性疾患を、更新の際に「来年度から補償の対象外とします。」と条件を付け加えてくる保険会社があります。
もちろん中には「更新の際に条件を付け加えることはありません」といった記載をしているペット保険もあります。
猫がなりやすい「腎臓病」は慢性疾患のためかかってしまったら一生の付き合いが必要な病気です。
加入を検討しているペット保険会社の「更新時の対応」についても必ず確認することをおすすめします。
また、ペット保険比較アドバイザーではそういった情報も一つの記事内でまとめていますのでぜひ一度ご確認ください。
猫におすすめのペット保険をご紹介!
最後に、今回ペット保険比較アドバイザーでは猫におすすめのペット保険をご紹介します。
おすすめの理由としては上記で説明した猫及びサイベリアンのペット保険の選び方、ポイントや条件をすべて満たしているからです。
アニコムでは保険金請求回数に応じた保険料割増制度ありますが、「腸内フローラ測定」を年一で行えるため、猫の死因ランキング1位である腎不全の予防までできる他、外出しずらい猫には有効な健康チェックです。
ただし、細かい補償内容や金額についてはもちろん違いがありますので必ず重要事項説明書や保険約款、パンフレットや公式HPを確認してください。
あくまで参考ですが、そもそも病気にさせたくないと考える飼い主様にはアニコムがおすすめです。
ちなみに、気になる保険料を条件が近いプラン同士で比較すると、保険料が高い順に①アニコム、となります。※0~15歳までの保険料の総額
メリット | デメリット | |
・歯科治療も補償 ・「腸内フローラ測定」等の予防型サービスも付帯 ・通院は一日当たり14,000円×年20日まで補償(補償割合70%プラン) |
保険料が高い 保険金請求回数に応じた保険料割増制度あり |
弊社の商品の保険期間は1年間ですが、ご契約には「継続契約特約」を適用して引受をさせていただいておりますので、解約等のお申し出がない限り満期後は、原則ご契約は自動的に継続となり、終身ご継続いただけます。
※ご注意
・ご契約者または弊社より別段の意思表示があった場合には、ご契約は継続となりません。
・自動的にご契約が継続とならない場合や、商品改定により保険料、補償内容などが変更となる場合があります。
引用:重要事項説明書
補足:先天性疾患が発症する前に!遅くとも7.8歳までには加入しよう
ペット保険は、加入する前に発症している先天性疾患は補償の対象外となります。
そのため、病気になってから保険に加入しようとしても、肝心のその病気の治療費は補償の対象外になってしまいます。
また、加入後に発見できた病気であっても先天性疾患を補償の対象外としているペット保険や、慢性疾患にかかると更新できない保険もあります。
また一般的にペット保険では8~12歳で新規加入年齢を設定していることがほとんどです。早いところでは7歳で新規加入を締め切るペット保険もあります。
「健康なうちに加入しないと意味がない」「また年齢制限に引っかからないから保険の選択肢が広がる」という意味で遅くとも7~8歳までにはペット保険の加入、少なくとも検討をすることをおすすめします。
補足ですが、アニコムやプリズムコールではシニア向けのペット保険商品もあります。しかし保険料も高くなり、補償内容のグレードも普通のプランより下がってしまいます。
高齢・シニア向けのペット保険については下記の記事でも解説していますのでぜひ参考にしてください。
よくある質問
多発性嚢胞腎(pkd)猫が診断されても長生きできますか?
それぞれの猫によって嚢胞の進行度合いや発症する期間はさまざまですが、平均寿命は7歳前後となっています。
一方で個体差はあるものの腎機能の機能が低下することに体が順応し最期まで症状が出ない猫もいます。
寿命は決して長いとは言えませんが、あきらめずにきちんと治療を行うことである程度の延命は可能でしょう。
慢性腎不全の猫に血尿がみられました。
腎不全で血尿が出るのは基本的には少ないことから、腎不全以外の原因が考えられます。
血尿を伴う疾患として泌尿器系の炎症や腫瘍があげられます。
早期の治療で血尿が治ったというケースも多いため、早めに動物病院で診てもらいましょう。
ペット保険は必要?
ペットには公的な保険制度がありません。そのため治療費の自己負担額は100%です。
もしもの時に、お金を気にせずペットの治療に専念できるよう健康なうちにペット保険に加入することをおすすめします。
また、病気になった後では加入を断られる可能性があります。
ペット保険比較表や記事を活用するのがおすすめ!
ペット保険比較アドバイザーでは、ペットに合った保険の選び方やペットの健康に関するお役立ち記事を公開しております。
記事と合わせて比較表も活用することで、ペットと飼い主様に合った保険を選ぶことができます。
また、保険会社のデメリット等も理解できるので、後悔しないペット保険選びができます。
ペット保険への加入を検討されている方はぜひご活用ください。
【多発性嚢胞腎の猫は長生きできない?余命を延ばす治療法とは?】まとめ
今回、ペット保険比較アドバイザーでは
・猫の多発性嚢胞腎の原因
・猫の多発性嚢胞腎の予防方法
多発性嚢胞腎は完治はできませんが延命はできます。その効果を上げるためには早期発見が重要です。
長期的な治療が必要になる疾患のため、もしもの時の備えをしておきましょう。